太陽光発電は、2000年ごろから日本でも実用化された発電技術です。当時はコスト面や技術面のハードルが高い理由から、導入できる一般家庭は多くありませんでした。
しかし、2010年を過ぎたころから低コストで発電効率の高い太陽光パネルが開発された影響で注目され始めます。
そして、2012年に環境産業省が固定価格買取制度(FIT制度)を開始して以降、国内の需要が急激に高まり、現在まで導入率が増えたのが経緯です。
技術面やコスト面が向上した現在でも、太陽光発電に関する課題は多くあり、日々研究が進められています。
この記事では、太陽光発電が抱える今後の課題、解決方法、導入率などをわかりやすく解説します。
太陽光発電の今後について詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を最後までご覧ください。
太陽光発電が抱える今後の課題
太陽光発電は10年前と比較すると、技術が高くなり、コスト面も大幅に改善されました。
しかし、すべての課題が解決したわけではなく、現在でもさまざまな課題点が残っているのが現状です。
ここでは、太陽光発電が抱える今後の課題について詳しく解説します。
技術面による問題
太陽光発電の課題は、技術面による問題があります。
太陽の光をエネルギーに変換する技術は日々研究が進められていますが、太陽光発電の発電効率は約20%です。発電効率は実際に電気に変換できる割合を示しており、数値が高くなるほど多くの電気を生成する意味となります。
太陽光発電の発電量は天候に大きく左右されるため、安定して電気を作り出すことが難しく、電力会社からのバックアップ供給が必要不可欠です。
また逆に、発電した多くの電力を送電できるようになると、架電流で電力会社の出力抑制が必要になるため、効率良く発電するバランスが難しいといえるでしょう。
そのため、今後は安定した電力を作り続けられる技術力が求められます。
導入コストによる問題
太陽光発電の導入は、10年前の価格帯では4.5kWで約233万円だったのが、2021年には4.5kWで約123万円まで導入コストが下がりました。
しかし、設置するには土地の確保や送電網の工事も必要になるため、新規導入コストが高額になってしまうのが現状です。
また、2014年以降は導入コストに大きな改善もなく、年々売電価格も下がっているため、現在では太陽光発電の導入に悩む方も少なくありません。
管理コストによる問題
太陽光発電は、設置後にも継続的な管理コストが発生します。太陽光パネルの破損や故障、パワーコンディショナーの経年劣化による交換、定期メンテナンスなどの費用が大きな課題です。
太陽光発電は経年劣化により発電効率が低下するため、太陽光パネルやパワーコンディショナーの交換が一定期間で必要になります。
パワーコンディショナーの寿命は約20年、太陽光パネルは10年〜20年で性能が低下するといわれています。
自然災害による設備破損リスク
太陽光発電の設置によって避けて通れないのは、自然災害による破損リスクです。
太陽光発電システムは屋根の上、軒下、庭先などに設置するため、自然災害で設備が破損して発電が停止する場合があります。台風や落雷、雹(ひょう)などの被害によって設備が故障してしまうケースも少なくありません。
そのため、今後開発される新製品には、あらゆる自然災害のダメージに耐えられる耐久性と性能が求められます。
電力の買取価格が下落傾向
太陽光発電の買取価格は、年々下落し続けています。
下落している主な原因は、太陽光発電システムの普及率が増加したためです。
また、2012年7月に開始した再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)による一定価格の売電期間が満期を迎える方もいます。FIT制度が満期を迎えると売電価格が低下するため、電力会社の変更やプランの見直しが大切です。
太陽光発電の売電価格が下落して普及率が大幅に下がってしまうと、世界中で起こるエネルギー枯渇問題を乗り越える大きな課題となります。
太陽光発電の売電価格について、詳しく知りたい方は次の記事も参考にしてください。
→「太陽光発電は7割が損をする」は本当?損をする原因や効果的な対策を解説
太陽光発電の課題を解決する方法
太陽光発電の導入を検討している方は、地方自治体の制度、過去の災害事例調査、太陽光発電を導入する目的を明確にしてから検討しましょう。
ここでは、太陽光発電の導入にともなう課題の解決方法を説明します。
補助金制度を利用して導入費用を抑える
太陽光発電を導入する場合は、地方自治体の補助金制度で導入費用が抑えられます。決められた期間内に補助金の申請を行い、自宅の太陽光発電システムが要件を満たせば、補助金制度の活用も可能です。
ただし、すべての自治体が補助金制度を行っているわけではありません。各自治体では補助金が事業予算内で定められており、地域によって予算も異なります。
また、東京都では令和7年4月から一戸建て住宅を含む新築建物に対して、太陽光発電設置を義務化する発表がされています。
都内で一戸建て住宅を建てる場合は、補助金制度を活用すれば大きなコストカットになるため、事前に確認しておきましょう。
災害時の利用範囲と事前調査
太陽光発電は、蓄電池と併設するのが一般的です。蓄電池を導入すれば太陽光によって変換した電気を蓄えられ、必要に応じて消費できます。
蓄電池には特定負荷タイプと全負荷タイプの2種類があり、蓄えた電気は災害が発生した際に非常用電源として利用可能です。
しかし、2種類の負荷タイプには災害時に利用できるエリアが限定されています。
特定負荷タイプの蓄電池は、蓄電池から供給する電気を家庭の特定のエリアに限定設計したタイプです。例えばキッチンやリビングなどに限定したタイプになります。
一方で全負荷タイプの蓄電池は、停電時に家のすべてのエリアに電気供給が可能です。そのため、停電時でも普段通りの生活ができます。
また、新築を建てる場合に太陽光発電を設置する際は、地盤沈下や過去の災害事例なども合わせて調べておきましょう。住まれるエリアが水害に弱い、地盤が緩いなどの情報を事前に知ることで災害時に迅速な判断が可能です。
売電する電力会社の変更を検討する
余剰電力買取制度(FIT制度)が満了になると、電力会社の売電価格が下がる場合があるため、プランの見直しや電力会社の変更が必要です。
売電価格が高い電力会社を調査し、余剰電力を高く売電できるようにしましょう。
また、FIT制度が満了しても、自動的に売電プランが切り替わらずに安価な価格のまま送電してしまって損をするケースがあります。
そのため、FIT制度が満了する前に電力会社のプラン契約を変更しておくとよいでしょう。
蓄電池を効率よく活用する
太陽光発電は、蓄電池とセットで導入するのが大切です。
太陽光で作られた電力を蓄電池を経由しないで自家消費する場合は、送電ロスが多いため、蓄電池を導入して無駄なく蓄えられるように検討しましょう。
家庭に導入できる蓄電池には、電力を蓄えられる容量に違いがあります。製品によって容量や性能も異なり、容量が大きくなると価格も高くなるのが一般的です。
そのため、家庭の発電量と消費量を計算し、使用量に応じた蓄電池の導入を検討しましょう。
家庭用燃料電池(蓄電池)について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
→家庭用蓄電池とは?導入するメリット・デメリット、簡単に設置できる方法を解説
太陽光発電システムをやめる
太陽光発電を導入してから20年経過し、FIT制度が満了を迎えるタイミングで太陽光発電を撤去する方法があります。20年経過してパワーコンディショナーの寿命による交換も重なり、多くの費用が発生する場合には撤去の検討も大切です。
設置から20年が経過すると家族の年齢層が高くなり、電力を使う量が少なくなるケースもあるため、電力会社から電気を購入した方が安い場合もあります。
もし、太陽光発電のメリットを活かせない場合には、専門業者や設置業者に撤去の相談をしてみましょう。
太陽光発電の導入率
太陽光発電は2010年以降から導入コストが下がり、日本でも地方エリアを中心に多く導入されてきました。
また、現在でも再生エネルギーの活用を推進させる国の意向が高まり、新築住宅に導入を検討する家庭も増えています。
ここでは、太陽光発電の導入率について解説します。
日本の太陽光発電システムの導入率
2017〜2020年度の4年間で住宅用太陽光発電システムの導入件数は、年平均14.3万件と非常に導入率が高まりました。
しかし、FIT制度が始まった2012年7月〜2014年3月末の27.2万件がピークで、売電価格の低下にともなって導入率も徐々に低下傾向になっています。
電気料金の高騰によって太陽光発電を導入を検討する家庭もありますが、売電価格の下落と深夜電力プランの値上げが相まって、導入を悩まれる方が多くいるのが現状です。
現在の初期費用とランニングコストを踏まえると、太陽光発電の売電で大きな収入を得るのは難しいといえるでしょう。
日本で太陽光発電の普及率が高い都道府県
都道府県 | 太陽光発電機器のある住宅割合 |
佐賀県 | 7.5% |
宮崎県 | 6.7% |
長野県 | 6.4% |
山梨県 | 5.9% |
熊本県 | 5.7% |
日本の太陽光発電普及率は、佐賀県がトップで九州地方の導入率が高くなっています。
九州地方では日差しを遮る高層の建物が少ないエリアの導入率が高く、山梨や長野などの年間を通して日照時間が長い地域でも割合が高くなっているのが特徴的です。
都心部でも太陽光発電を導入している家庭もありますが、土地の広さや発電効率を考えると地方エリアの方が適しているといえるでしょう。
今後、日本で増える産業用の太陽光発電設備の課題
太陽光発電は家庭用だけでなく、地方の山間部で広大な土地を利用した産業用の太陽光発電設備があります。太陽光発電設備は通称メガソーラーとも呼ばれ、多くの太陽光パネルと大型蓄電池を設置して売電を行っているのが特徴です。
ここでは、産業用の太陽光発電設備の課題について解説します。
土砂災害や地滑りなどのリスク
太陽光発電設備を設置する場所は、50%以上が林地です。林地を開拓してから地面を整地し、多くのソーラーパネルを並べて発電を行います。
開拓では林地の木を伐採してから地面を整地するため、排水処理や土地造成を正確に行わないと、大雨などで土砂災害や地滑りなどリスクが増加します。
そのため、綿密な水路計画や木の根まで伐採しない専門知識が必要です。
また、新たに太陽光発電設備を建設するには、近隣に住む方のさまざまな不安を解消させる説明会が必要となります。
太陽光パネルの反射光
林地に設置される太陽光発電設備は大量の太陽光発電パネルが並ぶため、太陽光の反射による近隣トラブルが起こる場合もあります。
近隣に住まれる方は、眩しい、暑いという問題に悩まされるケースがあるため、太陽光パネルの向きや反射防止フェンス設置などの対策が必要です。
太陽光発電設備の建設では、近隣の方の理解を得られる説明が必要であり、長期間の設置に不安を与えない配慮も大切です。
パワコンの騒音問題
太陽光設備は大量の太陽光パネルを使って発電を行うため、太陽光エネルギーを電気に変換するパワーコンディショナーも大型になります。
パワーコンディショナーは稼働時に微小の機械音が発生しており、民家などが近い場合には騒音トラブルになる場合もあるでしょう。
都心部では気にならない音でも郊外では車や生活音が少ないため、音が反響して大きく聞こえてしまう場合もあり、騒音対策は必要不可欠です。
また、工事や点検作業を行う場合には重機やクレーンなどの出入りで起こる騒音なども、近所に住まれている方に向けた配慮が必要になります。
森林伐採による景観問題
太陽光発電施設は山林部を開拓して建設を行うため、自然が少なくなり、電柱などの人工物が景観を壊してしまう場合があります。
そのため、景観を壊さないように建設する場所や伐採する木々の決定は重要です。
また、太陽光発電設備の建設で行う森林伐採は環境問題の観点から懸念されています。
建設後に地方自治体や住民の方とトラブルに発展しないためにも、事前計画と納得いく説明が大きな課題点です。
災害による二次被害
太陽光発電設備の建設は、土砂崩れや地滑りなどの災害リスクだけではありません。
自然災害によって断線したケーブルから漏電や火災が発生したり、台風などでパネルが破損して人や民家に直撃する二次被害も考えられます。
そのため、施設内および近隣の方が通るエリアの安全を確保し、フェンスや街頭などを設置する保安対策が必要です。
また、夜間でも万が一のトラブルが発生時に備えて、作業員の常駐が必要になるでしょう。
不要となったパネルやパワコンの処理問題
太陽光発電施設の課題には、産業廃棄物の処理も挙げられます。
太陽光パネルやパワーコンディショナーは有害物質を含むため、産業廃棄物として適切に処理しなくてはいけません。
専門の解体業者に依頼して、正しい解体方法で処理をしないと環境破壊にもつながってしまうため、廃棄物の管理と計画性が大切です。
また、太陽光パネルはリユースやリサイクルは現在の技術を用いても難しいとされており、産業廃棄物が多くなってしまう点も今後の課題といえるでしょう。
まとめ
この記事では、太陽光発電が抱える今後の課題、解決方法、導入率を解説しました。
日本国内では2014年のFIT制度導入から急激に導入率が加速しましたが、太陽光発電の普及率の増加とFIT制度の満期が重なり、売電価格は低下傾向となっています。
売電を目的にした太陽光発電の導入は効果的ですが、買取価格が低下した現在、売電目的から自家消費へ考え方を変えることも重要です。
電気代の高騰による家庭の負担を軽減し、太陽光で発電した電力を蓄電池とセットで自家消費する形に変更すれば、大幅な節電効果が期待できます。
もし、自家消費を検討するなら、EcoFlowポータブル電源とソーラーパネルをセットで併用するのがおすすめです。
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