過負荷や短絡、配線などが原因で起こる過電流。許容量以上の電流が流れると、配線が過熱して焼損したり、電気火災が発生したりします。過電流によるリスクを回避するためには、過電流を検出・遮断する保護装置の設置や、タコ足配線の改善が欠かせません。
そこで本記事では、過電流とは何かについて原因やリスクを詳しく解説します。過電流を防ぐための対策や、過電流保護を搭載した製品も掲載しているので、家庭で身近に潜む過電流の危険を回避したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
過電流とは

過電流とは、電気設備や配線に許容量以上の電流が流れる現象です。電気系統には一度に流せる電流の大きさが規格されており、許容電流を超えてしまうと、銅線が過熱し劣化していきます。一度、許容電流を超えた銅線は抵抗値が大きくなり、熱を持ちやすくなるのです。
定格電流を防ぐための仕組みとして、一般的な家庭にはブレーカー(配線用遮断器)が設置されています。定格電流を超えてブレーカーが作動すれば、自動で電流は遮断されます。
過電流が生じる4つの原因

過電流が起きる原因の多くは、電気機器の使い方に関係しています。知らず知らずのうちに配線や電気機器に負荷が蓄積していくと、過電流が生じて大惨事になりかねません。過電流が生じる原因は、以下のとおりです。
- 原因1|誤った配線による短絡
- 原因2|機器の故障による短絡
- 原因3|電気機器への過負荷
- 原因4|落雷による雷サージ
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
原因1|誤った配線による短絡
配線を誤った状態で通電すると、回路内の線が接触して短絡(ショート)を引き起こし、過電流が生じます。短絡とは、電気が負荷機器を経由せずに大きな電流が流れる現象です。
配線を誤った場合は、作業指示書や設計を見直して点検しなければ、再通電時に短絡を繰り返してしまいかねません。通常、短絡で過電流が発生するとブレーカーが作動して、電流は遮断されます。
原因2|機器の故障による短絡
配線が正しかったとしても、機器が故障していると短絡が発生し、過電流を発生させます。過電流を発生させる原因となる電気機器の故障例は、以下のとおりです。
- モーターの動作不良
- コンプレッサーの動作不良
- 制御部品の劣化
- サーマルリレーの誤作動
- 電源異常
電気機器の内部で絶縁体が劣化していると、心線が直接触れ合い短絡を引き起こします。内部の故障は外見で判断できないため、専門業者によるメンテナンスや修理が必要です。
原因3|電気機器への過負荷
電気系統を一度に多用したり、一つの電気機器に大きな負荷をかけたりした場合、電線や電気機器が許容できる電流の大きさを超えて過電流が生じます。
特に消費電力の高いドライヤーや電気ストーブ、アイロンなどは過負荷になりやすいので、注意が必要です。過負荷は電線や電気機器の過熱につながり、故障の原因にもなります。
原因4|落雷による雷サージ
電気機器の使用方法によらず、落雷による雷サージも過電流を生じる原因の一つです。雷サージとは、建造物や電線に落雷して、一時的に発生する過電流を指します。雷の電流は1,000A〜300kAと莫大な大きさを誇り、屋内の電気設備に多大な被害をもたらします。
雷サージが発生する主な要因は、以下のとおりです。
雷サージの要因 | 特徴 |
直撃雷 | 建築物の避雷針、アンテナ、送配電線、通信線に直接落雷する現象 |
誘導雷 | 近くの樹木や建築物に落雷し、導線を伝って屋内に侵入する現象 |
逆流雷 | 建造物への落雷で接地電位上昇が生じ、導体に電流が流出する現象 |
過電流が生じるとどうなる?

過電流が発生すると、取り返しのつかない事故につながる恐れがあります。たとえ、ブレーカーが電流を遮断したとしても、機器の過熱や火花は生じるので油断はできません。過電流が生じた際に起こりえる主な被害は、以下のとおりです。
- 電線や配線器具が焼損する
- 電気火災が起きる
それぞれの被害について、詳しく見ていきましょう。
電線や配線器具が焼損する
過電流が発生すると、電線や配線が過熱によって溶ける恐れがあります。焼損した電線や配線を放置していると、火災や感電の原因になるため危険です。
過電流によって一度許容量を超える熱が加わった電線は、抵抗値が多くなり、再通電によって熱を持ちやすくなります。延焼した電線や配線は、早急に交換しなければなりません。
電気火災が起きる
過電流によって電線や配線が発火すると、電気火災を引き起こします。ブレーカーが落ちたとしても火花が一瞬だけ散ることがあり、周囲の可燃物に火が移る恐れもあるのです。東京消防庁の資料によると、電気火災の発生件数は年々上昇傾向にあります(※1)。
※1参考:東京消防庁「令和6年版 火災の実態」
過電流を防ぐための対策5選

過電流は、家庭でも起こりえる身近な問題です。過電流のリスクを放置していると、電気機器の早期買い替えにより経済的な負担が増えるだけでなく、人命に関わる事態にまで発展しかねません。過電流を防ぐための対策は、以下のとおりです。
- 対策1|過電流遮断器(ブレーカー)を設置する
- 対策2|雷サージ保護デバイス(SPD)を設置する
- 対策3|過電流防止ブレーカーを設置する
- 対策4|たこ足配線を止める
- 対策5|過電流保護機能搭載の機器を使う
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|過電流遮断器(ブレーカー)を設置する
過電流を防ぐために欠かせない対策は、過電流遮断器(ブレーカー)の設置です。ブレーカーは、過電流が起きた際に電線の回路を自動で遮断します。ブレーカーの動作時間は、過電流の大きさによって異なるのが特徴です(※2)。
ブレーカーの定格電流 | 動作時間 | |
過電流:定格電流の125% | 過電流:定格電流の200% | |
~30A | 60分以内 | 2分以内 |
30A~50A | 60分以内 | 4分以内 |
50A~100A | 120分以内 | 6分以内 |
100A~225A | 120分以内 | 8分以内 |
225A~400A | 120分以内 | 10分以内 |
400A~600A | 120分以内 | 12分以内 |
※2参考:関東電気保安協会「現場の記録から 事故事例集 Ver.3」
対策2|雷サージ保護デバイス(SPD)を設置する
落雷に起因する過電流は、日頃からいくら電気機器の使用方法に気を付けていたとしても防げません。雷サージ保護デバイス(SPD)は、雷サージを安全に放出し、過電流によって電気機器が破損するのを防ぎます。
SPDを設置するのは、電流の侵入経路である電源線や通信線です。SPDは、回線系統や保護対象の電気機器に対応する種類を選びましょう。
対策3|過電流防止ブレーカーを設置する
過電流防止ブレーカーは、稼動式プラグとコードが付いたブレーカーです。保護したい電気機器がある場所に設置して、直接過電流を防ぎます。
過電流が発生すると、まず最初に過電流防止ブレーカーが作動するため、建物内のブレーカーを落としません。点灯式スイッチを押して簡単に復旧できます。落雷による誘導電流からも機器を守れるので、精密機器や高価な機器に設置するのがおすすめです。
対策4|たこ足配線を止める
一度に多くの電気機器を使用するたこ足配線は、過電流が発生しやすくなるため避けてください。コンセントへの差込数が増えたとしても、許容できる電流の総量は変わりません。
コンセントへの差込数が多くなるほど、危険性は高まります。電気機器の消費電力やコンセント、配線の許容電流を確認した上で、定格容量内に収まるよう使用しましょう。
対策5|過電流保護機能搭載の機器を使う
電気機器によっては、内部に過電流保護機能を搭載した製品もあります。過電流保護機能が備わっている主な機器は、電源ユニットやインバータモーター、サーボモーターなどです。
機器単体で保護機能が働くため、ブレーカーと2重で過電流を防げます。ただし、落雷による莫大な過電流に対しては、効果を発揮しない場合もあるので注意しましょう。
リチウムイオン電池の過電流保護「BMS」とは

スマートフォンや家電、電気自動車などには、バッテリーとしてリチウムイオン電池が搭載されています。大容量バッテリーの安全性を確保するために採用されているのが、バッテリーマネジメントシステム(BMS)です。
BMSは、バッテリーの状態を常に監視・制御し、安全かつ安定的な運用をサポートしています。機器の劣化速度を最小限に留められるので、寿命を延ばす役割も担います。BMSに搭載されている主な機能は、以下のとおりです。
- セルの過充電や過放電を防ぐ
- セルの過電流や過電圧を防ぐ
- セルの温度を管理する
- セル内の電圧を均等化する
- 電池残量を算出する
電気機器を安全に使用するために、BMSは欠かせないシステムと言えるでしょう。
過電流保護(OCP)のメカニズム
BMSに搭載されている過電流保護(OCP)は、出力電流が規定を超えた場合に出力を停止させる機能です。過電流保護には、以下3通りの動作特性があります。
動作特性 | 特徴 |
定電流電圧垂下特性 | 出力電流は変わらず、出力電圧が垂下する |
フの字特性 | 出力電流と出力電圧が両方低下する |
ヘの字特性 | 出力電圧は低下するが、出力電流は増加する |
過電流保護が働いた原因を取り除き、電源を再投入すれば復帰します。
過電流保護を搭載!ポータブル電源とは

過電流保護を搭載した大容量バッテリーとして、アウトドアや非常用電源、節電対策など幅広い用途で活躍するアイテムが、ポータブル電源です。ポータブル電源とは、内部に大量の電気を蓄電し、コンセントがない場所でも電化製品に給電できる機器を指します。
ポータブル電源が活躍する場面について、詳しく見ていきましょう。
- 【アウトドア】冷暖房機器や調理家電を稼働して、屋外でも快適に過ごせる
- 【停電対策】災害による大規模な停電時に、電気のある生活を継続できる
- 【節電対策】電気料金の安い時間帯に貯めた電気だけで生活できる
- 【節電対策】ソーラーパネルから貯めた無料の電気で生活できる
- 【DIY・現場】電動工具をフル稼働して、作業を効率化できる
- 【ノマドワーク】電源の縛りから解放されて、好きな場所で働ける
ポータブル電源は自宅のコンセントから独立しているので、雷サージによる過電流が発生しません。過電流保護を搭載していれば、過負荷や短絡による過電流も自動で検知して出力が停止します。安全で快適な生活に、ポータブル電源は必需品と言えるでしょう。
安全に使うために必要な性能|おすすめの製品
安全なポータブル電源を選ぶ際には、BMSを搭載しているかが重要です。BMSは過電流のみならず、過充電や過放電、過電圧、過熱、短絡などの危険を検出・制御します。
EcoFlowは、BMS搭載のポータブル電源を以下の出力・容量別に販売しています。
- RIVER 3 Plus:定格出力600W/容量286Wh
- DELTA 3 Plus:定格出力1500W/容量1024Wh
それぞれの機種について、詳しく見ていきましょう。
RIVER 3 Plus
X-Boostで最大900Wの出力を誇り、90%の家電に給電できるポータブル電源。約4.7kgの軽量コンパクト設計なので、アウトドアや避難所、仕事場などに気軽に持ち運べます。容量はワイヤレス接続で最大858Whまで拡張できるため、用途に合わせて選びましょう。
LEDライトを搭載しており、夜の照明代わりにもなります。防水、耐火、耐衝撃設計に優れているので、寒冷・温暖な厳しい環境下での安全性も抜群です。災害によって突然電力供給が停止したとしても、10ms以内にポータブル電源から電力が供給されます。

在宅避難「DELTA 3 Plus」
X-Boostで最大2000Wの高出力を誇り、99%の家電に給電できるポータブル電源。高出力・大容量でありながら、コンセントからの充電時間はわずか56分です。2つの500Wソーラー入力ポートを使えば、屋外でも70分で満充電できます。
悪天候が予想された場合は、ユーザーに通知して優先的に充電されるので、災害対策としてもおすすめです。高性能のBMSを搭載し、過充電による発火や火災を防げます。本体に搭載されている出力ポートは、ACやDC、USB-A/C、シガーソケットなど計13個です。

過電流とは何かに関するよくある質問

最後に、過電流とは何かに関するよくある質問を紹介します。
- 過電流・過電圧・過負荷・漏電の違いとは?
- 過電流継電器と過電流遮断器の違いとは?
- 過電流遮断器と配線用遮断器の違いとは?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
過電流・過電圧・過負荷・漏電の違いとは?
過電流・過電圧・過負荷・漏電の違いは、以下のとおりです。
用語 | 定義 |
過電流 | 電気設備や回路に許容量を超える電流が流れる現象 |
過電圧 | 電気設備や回路に許容量を超える電圧が流れる現象 |
過負荷 | 回路中の機器に許容以上の大きな電力がかかる現象 |
漏電 | 電気機器や配線から電気が漏れる現象 |
過電流継電器と過電流遮断器の違いとは?
過電流継電器(OCR)とは、過負荷や短絡によって異常な電流が流れた際に検出する機器を指します。過電流を検出するだけなので、電流の遮断は行いません。
一方の過電流遮断器とは、回路内の異常な電流を検知し、回路を自動で遮断することで電気機器や配線を保護する装置です。
過電流遮断器と配線用遮断器の違いとは?
過電流遮断器は、配線用遮断器(ブレーカー)やヒューズの総称です。いずれも回路に異常な電流が流れた際に、電流を遮断する機能を持ちます。配線用遮断器は、さらに安全ブレーカーや漏電ブレーカーなどに大別されるのが特徴です。
配線用遮断器は、自動で回路を遮断してもスイッチを戻せば復旧します。しかし、ヒューズはエレメントを溶断して電流を遮断するため、二度と復旧できません。
まとめ

本記事では、過電流とは何かについて解説してきました。
過電流とは、短絡や誤った配線、過負荷などが原因で異常な電流が発生する現象です。過電流が生じると、電線や配線が過熱して電気機器の破損につながります。また、電線が発火して電気火災が発生した場合には、人命に関わる事態にまで発展しかねません。
過電流を未然に防ぐためには、過電流遮断器の設置が重要です。過電流を検知すると自動で回路が遮断されるため、被害を最小限に抑えられます。また、過負荷による過電流を防ぐために、たこ足配線は止めましょう。差込数が多くなっても、電流の許容量は変わりません。
EcoFlowは、過電流保護機能が備わった安全性の高いポータブル電源を販売しています。電気火災のリスクを抑えて、快適なアウトドアや万全な停電・節電対策を実現したい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。