筆者: 伴 隆之
キャンピングカー専門誌をはじめ、アウトドア誌やモノ系&ファッション系の雑誌、WEBニュースに寄稿。DIYで車中泊カーを製作し、全国を股にかけて取材行脚に奔走する。
近年、日本では多くのキャンピングカーや車中泊カーでエアコンやクーラーを搭載したモデルが増えています。欧米では古くからルーフエアコンを装備するキャンピングカーが存在していましたが、日本ではハイエースなど1ボックス車をベースにした「バンコンバージョン」というジャンルが一般的。いざルーフエアコンを搭載するとなるとルーフ部に補強が必要だったり、重心が高くなることで操縦安定性に影響が出るなど、装着するのも大変でした。おまけに本体の価格も30〜40万円程度するためまさに高嶺の花の存在だったのです。
しかし2000年代に入ると、一般家庭で使用するウインドウクーラーやルームエアコンを搭載するモデルが増えていきます。室内機と室外機がセパレートしているものは室外機設置場所や配管などの問題をクリアする必要がありますが、インバーター内蔵で省電力、リーズナブルかつ高性能ということもあって一気に普及が進みました。近年では車載用DC12Vクーラーをはじめ、コンパクトで持ち運びもできるポータブルクーラーの登場でさらに人気に勢いがでています。
そんなエアコンやクーラーですが、電源はキャンプ場の電源付きサイトやRVパークに備わる電源などを利用することがほとんど。車内電源であるサブバッテリーを利用できるモデルもありますがバッテリー容量に加え、DC-ACインバーターといった電装システムを構築するとなると、導入にはかなりの金額が必要になってしまいます。
そこへ登場したのが「EcoFlow Wave」。いったいどんなモデルなのか興味津々。ということでさっそく見ていきたいと思います。
2022年5月24日に発表された「EcoFlow Wave」。
細かいサイズは下記スペックを参照していただくとして、実機を目の前にした感想としては「電子レンジよりちょっと大きいかな」くらいのサイズ感。本体も成人男性なら簡単に持ち上げることができ、前後には持ち運びがしやすいハンドルも装備しています。
スペック
サイズ:518×310×416mm
重量:17.5kg
冷房能力:1200W
最大運転電力:600W
騒音レベル:55dB
デザインはブラックとシルバーの配色に多面的な造形で高級感あるデザイン。フロントパネルには上部に吹き出し口とダイヤルボタン付きのLCD画面を配し、下部は冷風の吸気口になっています。背面は温風の給排口としています。
電源はAC100Vのほかに、バッテリーパック、ソーラーパネル、DC12V(アクセサリーソケット)に対応。ただし、ソーラーパネルとDC12Vに関しては送風運転のみが可能。右パネルの下部にはバッテリーパックやソーラーパネル、DC12V用の接続端子を搭載しています。
「EcoFlow WAVE」の注目ポイントはやはりバッテリーパック。本体と接続することによりコードレスで稼働させることができます。バッテリーの容量は1008Whで重量は7.9kg。バッテリーパック使用時に、作動予定時間(最大8時間)を設定すると、最適な作動状態を計算し、冷却と送風をバランスよく稼働させることもできる優れもの。
さらに、すでに発売されているポータブル電源のDELTA Max、DELTA Proがあれば、本体にあるバッテリーパックとの接続端子(XT150ポート)で接続も可能。他社のポータブル電源で利用するよりも作動時間が約28%延長できるといったメリットも魅力となっています。
気になる排水に関しても、冷却時に発⽣する凝結⽔はヒートチューブを通って⾃動的に蒸発させるドレンフリー機能を搭載。また、湿度の多いときは手動排水もできるようになっています。
おおまかな紹介が済んだところで、実際に使ってみることにしましょう。
今回はインディアナ・RV(http://www.indiana-rv.net/)さんに協力していただき、同社の軽キャンピングカー「インディ727」に搭載してみました。ベース車両はダイハツ・ハイゼットトラックをベースにオリジナルのシェル(居住部分)を架装したキャブコンバージョン。ルーフにはポップアップルーフを搭載し、ルーフテントに2人、フロアに2人と軽自動車ベースながら4人就寝を可能にしたモデルです。
検証したのは5月下旬。関東でも真夏日の予報が出ている晴天のキャンプ場。あえて日陰ではなく日向に停車させて使ってみることにしました。10時にキャンプ場へ到着してから撮影の準備など1時間ほどかかり、計測開始時間は11時ちょうど。車内温度(リビング中央に温度計を設置)は35.2℃、外気温は29.9℃となにもしていなくてもジワリと汗が滲む暑さです。
まずは、本体にバッテリーパックを取り付けてキッチンキャビネット上に設置。スペック上では5~8平方メートル(約3~4.8畳)未満であれば、1200Wの冷却性能により30℃の室内温度が8分で24℃まで冷やすことができるとのこと。まずは設定温度を1番低い16℃に設定し10分ほど冷却モード運転。
すると車内温度は35.2℃から26℃まで低下。ただ、26℃だと車内ではまだまだ暑く感じてしまいます。おまけに、吹き出し口からは冷気が出ているのですが、背面からの熱風も車内に残っているため冷房の効き目としては半減でした。
そこで、付属のファンカバーとダクトを背面に取り付けて温風ダクトを車外へ逃がすことに。その後、ものの5分とかからないうちに17℃まで車内温度がみるみると下がりました。この時点でルーフテント内での温度も19℃。どこにいても涼しいを通り越して寒いくらいの結果となりました。
車外に置いて冷風をダクトで車内に入れて使うこともできますが、盗難が怖いのと急に天候が変わったときなどに運搬するのは面倒なので、あくまで今回は車内設置で使いました。
今回、使って感じたことをまとめると下記の通り。
正面の吹き出し口上部に電源やモード、温度設定などのボタンを配置。右上の丸部分はLCDを内蔵し、温度やモード、バッテリー残量などが表示される設計。また、専用のスマホアプリで温度設定やタイマーなどの操作がサクサクできるのも好印象でした。
作動音は慣れてしまえばそこまで気にならない程度。ただし、就寝時に枕の近くにあったりするとやや気になるかもしれません。風量を下げているときはまったく気になりませんでした。
搭載する車両により設置場所は熟慮したほうがいいです。助手席の背もたれが前倒しできるような車両なら背もたれの上におくだけですぐに使えるし、専用の設置スペースを決めておけばポンと載せてすぐに使えて便利だと思います。
先述したとおり、車内に設置して使うと排熱が籠もるので、窓や外部扉などから温風ダクトが出せるよう、扉や窓、床などに工夫が必要です。
真夏日の直射日光を受ける車内の温度は窓の付近では60℃くらいになることも。実際にダッシュボードの上で温度計測したら55.2℃でした。そんな過酷な状況下で過ごすキャンピングカーや車中泊カー。シェードやカーテンの併用は当然ですが、軽キャンピングカーをはじめ、タウンエースをベースにしたライトモデルやハイエースでも標準ボディ・標準ルーフぐらいのサイズであれば冷却効果がしっかりと得られると感じました。ただし、先も述べた温風ダクトの利用は必須でしょう。
現在、キャンピングカーでは家庭用エアコンをサブバッテリーとインバーターで動かす場合、一般的には2~3時間を想定にして搭載していることがほとんどです。「EcoFlow Wave」だとバッテリーパックにより最大8時間までの作動予約時間が設定でき、自動的にコントロールしてくれるのが魅力。おまけに、スマホ連動によりスマホ側でバッテリー残量や温度などがすぐに確認できるのもうれしいです。
クルマ以外にもテントやタープなどアウトドアでも利用でき、もちろん家でも使えるのもいいですよね。バッテリーパックの充電方法が豊富なのもポイントが高いと思います。今年は猛暑になるとも言われています。クルマ旅に冷房装置がほしいと思っている方は一度チェックしてみてはいかがでしょう。
取材協力:インディアナ・RV
http://www.indiana-rv.net/