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余剰電力は太陽光発電システムで発電した電力のうち、自家消費しきれない電力を指します。活用方法には主に売電と自家消費の2つがありますが、近年は売電価格の低下により、自家消費をしたほうがメリットが大きいです。
とはいえ、自家消費をするにしても確かな知識と運用が必要になります。
この記事では、余剰電力の主な活用方法、売電よりも自家消費のほうがおすすめな理由、卒FIT後の注意点、無駄な余剰電力を発生させないテクニックをわかりやすく解説します。
余剰電力について知りたい方は、ぜひ本記事を最後までご覧ください。
余剰電力とは?
余剰電力とは太陽光発電システムで作られた電力のうち、家庭で使用しきれずに余った電力です。太陽光発電は日中にもっとも発電量が多くなりますが、多くの家庭では日中の電力消費量が少ないため、余剰電力が発生しやすくなります。
たとえば、4kWの太陽光発電システムを設置した家庭で晴れた日の昼間に1時間あたり3kWの電力を発電しているとします。この時に家庭での使用電力が1kWだった場合、2kWの余剰電力が発生する仕組みです。
余剰電力を有効活用すれば、太陽光発電システムの経済効果を高められます。そして、活用方法を把握していくと、システム導入による効果を最大限に引き出せるでしょう。
余剰電力の主な活用方法
余剰電力の主な活用方法には、電力会社への売電や家庭内の自家消費などの2種類が挙げられます。
ここでは、それぞれの活用方法について詳しく解説します。
電力会社へ売電する
電力会社への売電は余剰電力を有効活用する主な方法のひとつです。固定価格買取制度(FIT制度)の認定を受けている場合、国が定めた固定価格で一定期間買い取ってもらえます。
たとえば、2023年度に10kW未満の太陽光発電システムを設置した場合、10年間にわたり1kWh当たり16円で売電が可能です。この制度が有効なかぎりは、安定した売電収入を得られます。
ただし、FIT制度の買取価格は年々低下傾向にあり、2012年度の42円/kWhから大幅に下がっています。そのため、売電収入だけでなく、自家消費とのバランスを考えた運用が重要です。
→FIT制度終了後は運用方法の検討が必要!固定買取期間終了後の対応や自家消費のメリット・デメリットを解説
売電を選択する場合はFIT制度の認定取得や電力会社との契約手続きが必要ですが、これらは太陽光発電システムの販売・施工会社が代行してくれる場合があります。
家庭内の自家消費に使う
家庭内での自家消費は余剰電力を無駄にせず有効活用する方法です。
余剰電力は電力系統に流れ、実質的に捨てられてしまいます。しかし、蓄電池を設置すれば余剰電力を貯めておけるため、夜間や停電時に利用が可能です。
たとえば、4kWhの蓄電池を設置した場合、一般的な家庭の夜間消費電力をカバーできる容量になるでしょう。
近年はFIT制度による売電価格の低下に伴い、売電収入のメリットが減少しているため、自家消費をメインに使用する家庭が増えています。自家消費を増やせば、電力会社からの買電量を減らせるほか、電気代の節約が可能です。
また、停電時のバックアップ電源としても利用できるため、防災面でもメリットがあります。ただし、蓄電池の導入には初期費用がかかるため、費用対効果を十分に検討しなければなりません。
売電よりも自家消費のほうがおすすめな理由
余剰電力は売電に回すよりも自家消費がお得です。
ここでは、売電よりも自家消費がおすすめな理由を解説します。
売電価格よりも買電価格のほうが高い
買電価格は売電価格よりも高い特徴をもっています。そのため、余剰電力は売電せずに自家消費するほうが経済的にみてメリットがあります。
たとえば、2023年度のFIT制度による売電価格は1kWh当たり16円ですが、一般的な家庭の電力購入価格は1kWh当たり30円前後です。つまり、1kWhの電力を売電すると16円の収入になりますが、同じ1kWhを自家消費すれば30円の支出を抑えられます。
具体的な数字で見ると、1日に5kWhの余剰電力が発生する家庭の場合、売電すると80円の収入になりますが、自家消費すれば150円の支出削減です。年間で計算すると、売電の場合は29,200円の収入、自家消費の場合は54,750円の支出削減となり、自家消費のほうが25,550円もお得になります。
このように自家消費を増やせば、より大きな経済的メリットを得られます。
災害時のバックアップ電源として利用可能
蓄電池を設置して自家消費をメインに運用している場合は、災害にともなう停電時にバックアップ電源として利用できます。これは売電のみを行っている場合には得られない大きなメリットです。
たとえば、4kWhの蓄電池を設置している家庭の場合、停電時に冷蔵庫や照明など必要最小限の電化製品を約1日分使用できます。また、太陽光発電システムと組み合わせれば、晴れた日中は発電した電力を直接使用し、夜間は蓄電池の電力を使用するといった運用が可能です。
近年は大規模な災害による長期停電が各地で発生していますが、このようなバックアップ電源があれば、生活に必要な最低限の電力を確保できます。災害時に安心感がプラスされる点は、自家消費を選択する大きな理由といってもよいでしょう。
CO2排出ゼロで環境にやさしい
太陽光発電はCO2を排出しません。環境にやさしいほか、自家消費のサイクルによって電力会社からの買電を減らせば環境対策にもつながります。
一般的な家庭の年間電力消費量を4,000kWhとすると、そのすべてを火力発電による電力で賄った場合、約2トンのCO2が排出されます。一方で4kWの太陽光発電システムを導入し、その半分を自家消費できれば、年間約1トンのCO2排出量を削減可能です。
これは杉の木約70本が1年間に吸収するCO2量に相当します。
さらに蓄電池を導入して夜間の電力も太陽光発電でまかなえば、CO2排出量をさらに削減可能です。このように太陽光発電の自家消費を増やせば、個人レベルでも環境対策に取り組めます。
地球温暖化対策が急務とされる現在、自家消費の推進は環境保護の観点からも重要です。
卒FIT後に余剰電力の売電を継続する際の注意点
卒FIT後に余剰電力の売電を継続する際は、買取価格の低下や事業者による違いに注意しなければいけません。
ここでは、卒FIT後に余剰電力の売電を継続する際の注意点を解説します。
卒FIT後は余剰電力の買取価格が低下する
卒FIT後に余剰電力の売電を継続する場合、買取価格が大幅に低下する現実を理解しておく必要があります。FIT制度の適用期間中は国が定めた固定価格で買い取られていましたが、卒FIT後は各電力会社が独自に設定した価格での買取になるため注意が必要です。
たとえば、2009年にFIT制度を利用し始めた場合、10年間は1kWh当たり48円で買い取られますが、卒FIT後は7円〜11円程度まで下がるケースがあります。
具体的な数字で見ると、1日に5kWhの余剰電力が発生する家庭の場合、FIT制度下では1日240円の売電収入がありましたが、卒FIT後は35円〜55円程度まで減少します。
年間で計算すると、87,600円から約20,000円へと大幅に減少します。このような買取価格の低下を踏まえ、卒FIT後の対策を事前に検討しておきましょう。
売電価格は事業者によって異なる
売電価格は事業者によって異なるため、複数の事業者を比較検討しましょう。売電先には大手電力会社や新電力会社がありますが、一般的には新電力会社のほうが買取価格が高い傾向です。
たとえば、ある大手電力会社の買取価格が1kWh当たり8.5円であるのに対し、新電力会社の中には11円で買い取るところもあります。
具体的な数字で見ると、1日に5kWhの余剰電力が発生する家庭の場合、大手電力会社では1日42.5円の売電収入になりますが、新電力会社では55円の収入です。
年間で計算すると大きな差になるため、電力会社選びは慎重に行いましょう。ただし、価格だけでなく、契約条件や会社の信頼性なども考慮する必要があります。
また、買取価格は年度ごとに変更される可能性があるため、定期的に最新情報を確認してください。
買取価格の高い事業者は条件が厳しい
売電収入を増やすためには買取価格の高い事業者を選ぶ必要があります。しかし、条件が厳しいケースがあるため、事前確認が必要です。
たとえば、ある新電力会社では1kWh当たり14円という高い買取価格を提示しているものの、会社が指定する5kWhの蓄電池の導入が条件というケースは珍しくありません。
蓄電池の導入には100万円以上の費用がかかるため、売電収入の増加分と初期投資のバランスを考慮する必要があります。また、高い買取価格を提示している会社でも、条件が新築住宅を建てた顧客のみという場合もあります。
このような条件を踏まえると、買取価格だけで判断するのではなく、自身の状況に合わせて総合的に検討するのが重要です。
たとえば、蓄電池の導入を検討している場合は高価買取と蓄電池導入をセットにした提案が魅力的かもしれません。一方で、既存の住宅に太陽光発電を後付けする場合は、条件の緩い事業者を選ぶほうが現実的といえるでしょう。
無駄な余剰電力を発生させないテクニック
無駄な余剰電力を発生させないためには、蓄電池やエコキュート、EVの導入のほか、ライフスタイルの見直しが効果的です。
ここでは、無駄な消費電力を発生させない6つのテクニックを紹介します。
蓄電池を導入して夜間も電力を使用する
蓄電池の導入は余剰電力を効率的に活用するために有効です。太陽光発電システムで作られた電力のうち、日中に使用しきれなかった分を蓄電池に貯めれば、夜間や曇りの日にも電力を使用できます。
たとえば、4kWhの蓄電池を導入した場合、一般的な家庭の夜間電力消費量(約3〜4kWh)をカバーできます。これにより、電力会社からの買電量を大幅に減らせるほか、電気代の節約が可能です。
エコキュートの導入で無駄なくお湯をわかす
エコキュートの導入は余剰電力を有効活用できる方法のひとつです。エコキュートは空気の熱を利用してお湯を沸かす効率の高い給湯器で、太陽光発電システムと組み合わせれば大きな効果を発揮します。
たとえば、4人家族の場合、1日に約300リットルのお湯を使用しますが、これをわかすのに必要な電力は約10kWhです。4kWの太陽光発電システムを導入している家庭で、日中の余剰電力が5kWhある場合、この電力をエコキュートに使用できます。
これにより、夜間電力を使用してお湯を沸かす必要がなくなるため、電気代を大幅に節約できます。
EVとV2Hを導入して自家消費量を増やす
EVとV2Hの導入は余剰電力の活用と自家消費量の増加に効果的です。EVは電気自動車、V2HはVehicle to Homeの略で、EVの蓄電池を家庭用電源として利用するシステムを指します。
たとえば、日産リーフの40kWhバッテリーモデルの場合、満充電で家庭の平均的な4日分の電力消費量をカバーできます。4kWの太陽光発電システムを導入している家庭で、日中の余剰電力が5kWhある場合、この電力をEVの充電に使用可能です。
さらにV2Hシステムを導入すれば、必要に応じてEVの電力を家庭に供給できます。災害時には大容量のバックアップ電源として機能するため、防災面でも効果的です。
オール電化によって電力の使用量を増やす
オール電化の導入は電力の使用量を増やし、余剰電力を効率的に活用する方法です。オール電化とは、調理や給湯、冷暖房などの家庭内のエネルギー源をすべて電気で賄うシステムを指します。
たとえば4人家族の場合、ガスコンロから IHクッキングヒーターに切り替えれば、年間約1,000kWhの電力消費量が増加します。これは4kWの太陽光発電システムが1日に発電する電力量とほぼ一緒です。
オール電化の導入により、太陽光発電の自家消費率を30%から50%以上に高められます。
世帯の人数を増やす
世帯の人数を増やせば、電力の使用量を増やせるため、余剰電力を減らせます。ただし、実行には生活スタイルを大きく変える必要があるため注意が必要です。
2人世帯から4人世帯になった場合、一般的に電力消費量は1.5倍程度に増加しますが、世帯人数の増加は電力消費以外の面でも大きな影響があるため、余剰電力対策としては現実的ではありません。
可能であれば在宅ワークに切り替える
在宅ワークへの切り替えは日中の電力消費量を増やし、余剰電力を効率的に活用できます。通常、オフィスワークの場合は日中の家庭での電力消費量が少なくなりがちですが、在宅ワークに切り替えれば、日中も継続的に電力を使用可能です。
たとえば1人が在宅ワークに切り替えると、1日の電力消費量が2〜3kWh増加するケースがあります。4kWの太陽光発電システムを導入している家庭で、日中の余剰電力が5kWhある場合、在宅ワークによってこの余剰電力を2〜3kWh減らせる計算です。
具体的な数字で見ると、年間の自家消費率を30%から40〜45%程度に高められる可能性があります。
まとめ
余剰電力の主な活用方法、売電よりも自家消費のほうがおすすめな理由、卒FIT後の注意点、無駄な余剰電力を発生させないテクニックについて解説しました。
余剰電力の活用方法には主に売電と自家消費があり、近年は自家消費が推奨されています。自家消費は経済的なメリットが高く、災害時のバックアップ電源としても利用可能で、環境にも優しい選択肢です。
効率的な余剰電力の活用を見出して、経済的なメリットの獲得と環境への貢献を両立させましょう。
蓄電池の導入によって無駄な余剰電力の発生を抑えるのであれば、EcoFlow DELTA Pro 3がおすすめです。DELTA Pro 3は、1台で4kWhの容量を誇り、家庭内で使用する電力の多くをまかなえます。
また、最大24kWhまで容量拡張が可能なため、発電容量の大きな太陽光発電システムを設置していても余剰電力の無駄を減らせます。
DELTA Pro 3の詳しい製品情報については、以下のページをご覧ください。