2025年3月検針分(2月使用分)から、東京電力エナジーパートナーや北海道電力、東北電力など8社が家庭向け電気料金を値上げすると発表しています。この値上げは、火力発電に必要な燃料価格の上昇が主な要因です。
ただし、2025年1月から3月までは政府の補助金が適用されるため、一時的に電気代の負担は軽減される見込みです。とはいえ、補助金が終わったあとは再び電気代の値上がりが予想されています。
本記事では、2025年と今後の電気代値上げの見通しや、個人で行える電気代対策について解説します。電気代の値上げに備えたい方は、ぜひ参考にしてください。
2025年3月検針分から8社が電気代を値上げ

2025年3月(2月使用分)から、東京電力エナジーパートナー(以下、東京電力EP)や北海道電力、東北電力、中部電力ミライズなど8社が、家庭向け電気料金を値上げすると発表しています。
電力の燃料費調整制度により、火力発電に必要となるLNG(液化天然ガス)や石炭、原油の価格が上昇しており、それが料金に反映されているのが主な要因です。特に2025年2月まで実施される政府の補助金の影響を差し引いて考えると、電気代の負担増を実感する家庭が増える見通しです。
以下の一覧表は、電力使用量を月260kWhと想定した試算額をまとめたものです。2025年2月検針分と比較していずれも値上がりしており、地域によって数十円程度アップするケースが大半となっています。
電力会社 | 2025年3月検針(2月使用分) | 2025年2月検針(1月使用分) | 前月比 |
北海道電力 | 9,950円 | 9,927円 | 23円値上げ |
東北電力 | 8,119円 | 8,080円 | 39円値上げ |
東京電力EP | 8,218円 | 8,174円 | 44円値上げ |
中部電力ミライズ | 8,024円 | 7,969円 | 55円値上げ |
北陸電力 | 7,983円 | 7,952円 | 31円値上げ |
関西電力 | 7,069円 | 7,069円 | 変動なし |
中国電力 | 7,758円 | 7,721円 | 37円値上げ |
四国電力 | 7,920円 | 7,894円 | 26円値上げ |
九州電力 | 7,244円 | 7,247円 | 3円値下げ |
沖縄電力 | 8,858円 | 8,814円 | 44円値上げ |
具体的には、東京電力EPが44円、北海道電力は23円、東北電力は39円、中部電力ミライズで55円程度の値上がりです。下げ幅は九州電力のみわずかに3円の値下がりでしたが、全体としては燃料費調整単価の上昇が、電力料金の改定に反映された格好です。
この値上げによって家庭の電気料金にどの程度の影響が出るかは、契約プランや使用量、各家庭のライフスタイルによって変わります。
2025年1月使用分から3月使用分まで「政府の補助」が適用

実際には、2025年1月使用分(2月請求分)から3月使用分(4月請求分)までは、「電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金」が導入される予定です。
具体的には、2025年1月・2月使用分(2月・3月請求分)の場合、低圧契約なら1kWhあたり2.5円、高圧契約なら1kWhあたり1.3円が割引される見通しです。3月使用分(4月請求分)はそれぞれその半額、低圧1.3円/高圧0.7円まで減額となります。
この補助金制度のおかげで、期間中は月500円前後の電気代を抑えられる家庭も出てくるでしょう。ただし、補助が終了する4月使用分以降は負担が元の水準に戻る上、燃料費調整制度の影響を大きく受けやすい電力市場の特性も考慮すると、実質的な値上がり感を意識する方が多いかもしれません。
2024年度末の時点で物価や為替レート、燃料価格の動向がどうなるかに左右されますが、政府の補助をあてにしすぎず、家計への影響を見極めながら電気使用量をコントロールする必要があります。
2025年の電気代が値上げ・値下げされる理由

燃料費調整制度による原油価格高騰の影響が、電気料金に反映される仕組みです。ここでは、電気代が値上げ・値下げされる理由を5つ紹介します。
理由1.政府の補助が3月使用分まで
2025年1月使用分から始まる「電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金」は、3月使用分をもって終了する予定です。つまり、1月と2月使用分の電気代は低圧で1kWhあたり2.5円、高圧で1.3円の補助が受けられ、3月使用分ではその半額となります。
この期間は電気料金の負担が多少軽減されるものの、4月以降は補助が終了する予定のため、実質的に電気代が再上昇する見込みです。
特に冬季は暖房などで電気の使用量が増える家庭が多く、補助金の存在が家計を支える一因になるでしょう。しかし、それが終わる4月使用分以降は、値上がりを実感しやすくなると言えます。
理由2.再生可能エネルギー発電促進賦課金の変更
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを普及させるため、電気料金に上乗せされる制度です。
年度ごとに経済産業省が単価を見直しており、2024年度には2円09銭/kWhの値上げが行われました。2025年度分は今後のエネルギー政策や調達コスト次第では、さらに上乗せされる可能性も否定できません。
この賦課金は電気を使った量(kWh)に応じて金額が増加する仕組みのため、消費電力量が大きいほど家計への打撃は大きくなります。
→【種類一覧】再生可能エネルギーとは?活用するメリット・デメリットを徹底解説
理由3.燃料価格の値上がり
電力の多くは火力発電によって生み出されており、その燃料となるLNGや石炭、原油などの国際価格が上がると、電気料金の燃料費調整額が跳ね上がります。
特にLNGは日本の発電構成で大きな割合を占めているため、世界的な争奪や価格高騰が起きると直ちに電気代に影響が及びます。
近年はウクライナ情勢や中東の不安定な情勢、脱炭素ブームで投資先が再エネにシフトしていることなどが重なり、化石燃料を増産しにくい状況にあります。そのため、需給バランスがひっ迫しやすく、燃料価格が高止まりする懸念が続く見込みです。
2023年末時点ではやや落ち着きを見せていますが、一時的な気候変動や地政学リスクが再燃すれば、再び値上がりするリスクは拭えないと言えます。
理由4.原子力発電所の停止
日本の電源構成はかつて原子力発電が3割前後を占めていましたが、2011年以降は停止や廃炉が相次ぎ、その比率が大幅に低下しました。東日本を中心とする地域では、火力発電の比率が高まり、その燃料費が電気料金に重くのしかかっています。
2024年11月に女川原子力発電所2号機が再稼働したように、一部原子炉の稼働が進むケースもありますが、依然として全国的に再稼働数は限られています。
原発が動けば燃料コストの削減につながる可能性がありますが、安全基準や地元合意などクリアすべき課題も多く、2025年までに大幅に稼働数が増える見通しは立っていません。そのため、しばらくは火力発電を中心とした高コスト構造が続くと予想されます。
理由5.電力供給力の低下
古い火力発電所の相次ぐ廃止や、再生可能エネルギーの不安定さによって、電力の供給力が盤石とは言えない状況が続いています。冬季や夏季など需要が急増する時期には、停電リスクや電力ひっ迫が叫ばれるほどで、需給がひっ迫すると電気代の上昇を招きやすくなります。
また、高度経済成長期に建設された火力発電所が老朽化し、維持費が上がることも電力コスト増の一因です。こうした不確実性の高いエネルギー事情が、2025年以降の電気料金をさらに押し上げる要素となるでしょう。
2025年と今後の電気代値上げの見通し

直近では、2025年初頭に政府の補助が再適用されることで一時的な電気料金の抑制が見込まれていますが、その後は燃料費調整額や再エネ賦課金の動向次第で、再び上昇する可能性が高いと考えられます。
国際的な燃料価格が大きく変動しなければ、急激な値上げは回避されるでしょう。しかし、日本のエネルギー自給率が低いことや、LNGや石炭の国際価格が不安定に推移している現状を考えれば、予断を許さない状況が続くことは否めません。
さらに、電源構成が原子力発電の稼働状況によって左右される点にも注目すべきです。東日本では原発の再稼働率が低く、火力発電の比率が高止まりしているため、相対的に燃料コストがかさみやすい構造になっています。
2025年以降も原発再稼働が進むのか、発電用燃料の国際価格がどう推移するかで、東西の電気料金差が大きく変わる可能性もあります。
また、再生可能エネルギーの普及に伴う再エネ賦課金の増加傾向は続くと予想され、2030年や2050年といった長期スパンでも、電気代の値上げリスクは残ると考えられます。
個別の節電努力や電力会社の選択など、1人ひとりができる対策を意識しつつ、先々の電気料金の推移を注視することが重要です。
個人で行える電気代値上げへの対策

電気代の値上げはどうしようもありませんが、個人で対策を行うことで実質的に料金を下げることは可能です。ここでは、個人でできる電気代の値上げへの対策を4つ紹介します。
- 電力プランを見直す
- 電力会社を変更する
- 積極的に節電に取り組む
- 太陽光発電システムを活用する
以下、各対策の詳細を1つずつ見ていきましょう。
対策1.電力プランを見直す
月々の電気代の計算方法は、基本料金や電力量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金など複数の要素で構成されます。そのなかで自分のライフスタイルに合わないプランを選んでいると、余計なコストを支払っている可能性があります。
特に夜間の使用量が多い家庭は、時間帯別の割安プランを検討する価値があるでしょう。また、アンペア(A)契約の見直しも有効です。
一般家庭では30Aや40Aで契約しているケースが多いですが、実際の最大使用電力を確認し、そこまで必要ない場合は低いアンペアに変更して基本料金を下げることも可能です。
対策2.電力会社を変更する
電力の自由化が進んだ現代では、いわゆる新電力を含め多くの小売電気事業者が参入しています。各社が独自のプランや割引を打ち出しているため、比較サイトを活用してより自分の生活スタイルに合った電力会社を探してみるのもおすすめです。
キャンペーンで加入時にポイントがもらえたり、ガスや通信サービスとセット割を行っていたりする事業者もあり、切り替えるだけで月々の電気代が節約できるケースも少なくありません。
契約期間の縛りや違約金の有無を確認した上で、長期的に見て得するプランを見極めると失敗が少なくなるでしょう。
対策3.積極的に節電に取り組む
日常生活において、積極的に節電に取り組むことも大切です。例えば、以下のような節電対策が効果的です。
- LED照明への切り替え
- 電気のつけっぱなしの削減
- エアコンの温度設定・フィルター清掃
- 冷蔵庫の使い方の見直し
- 待機電力の削減
小さな積み重ねでも、月単位・年単位でみると無視できないコスト削減効果が期待できます。家電を買い替える際は、省エネ性能の高い製品を選ぶこともポイントです。
最新の冷蔵庫やエアコンは従来比で消費電力量が大幅に減っていることが多く、導入コストはかかるもののランニングコストで大きな差を生む場合があります。無理なく取り組める節電策を継続することが重要です。
→一般家庭でできる効果的な節電方法15選!節電前に知っておくべきポイントも紹介
対策4.太陽光発電システムを活用する
屋根の形状や方位、日当たりなど条件が合えば、太陽光発電を設置することで日中の電力を自給自足でき、電気料金の削減につながります。
自家発電した電力を家庭内で消費しきれない場合は売電収入も期待できるため、長期的には導入コストを回収できる可能性があります。近年は蓄電池と組み合わせることで、夜間にも余剰電力を活用する家庭が増えています。
再生可能エネルギーによって燃料費調整の影響を緩和できる点は、大きなメリットと言えるでしょう。
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電気代の値上げに対する政府の緩和措置

政府は2023年6月1日からの電気代の値上げに伴い、さまざまな取り組みを実施しています。取り組み内容や電気料金の変更については、経済産業省の「電気料金の改定について(2023年6月実施)」で詳細が記載されています。
なかでも注目すべきが、政府による「激変緩和措置」です。政府は現在、標準的な家庭の電気料金で月額2,800円の負担軽減を行っています。電気料金は上昇しているものの、「激変緩和措置」なども考慮すると、すべての電力会社でロシアによるウクライナ侵攻前(2022年2月)の水準を下回るか、同等の水準になる見通しです。
この緩和措置は、電気・都市ガス料金の上昇によって影響を受ける家庭や企業の負担を直接的に軽減することを目的としています。特別な手続きや申請は不要で、2023年1月以降の使用分(2月以降の請求分)が対象です。
詳しい内容については、請求書や検針票、Web明細、契約している電力・都市ガス会社のホームページでも確認できます。
まとめ
本記事では、2025年と今後の電気代値上げの見通しや、個人で行える電気代対策について解説しました。
2025年3月から複数の電力会社が電気料金を値上げする予定ですが、政府の補助金によって一時的に負担は軽減されます。ただし、補助終了後は再び値上がりが予想され、燃料価格の高騰や再エネ賦課金の増加、原発停止などを理由に値上げが継続する見込みです。
個人でできる対策としては、電力プランの見直しや電力会社の変更、積極的な節電への取り組みなどがあります。長期的な節電対策として、太陽光発電システムの導入も検討する価値があるでしょう。電気代の値上げに備え、自分にできる対策を見つけて実践することが重要です。