- 2023年になって電気代はどれくらい上がったの?
- 各電力会社の値上げ率や値上げ時期を詳しく知りたい
- 政府が設けている「激変緩和措置」について教えてほしい
このような疑問や悩みを持っている方もいるでしょう。結論として、2022年1月分と2023年1月分の電気代を比べた場合、1ヶ月分だけで約1,500円も電気代が高くなっています。
また、大手電力会社は2023年4月〜6月にかけて電気代の大幅値上げを行ったため、これからさらに家庭や企業の電気代が上昇すると予想されます。しかし、その一方で政府は電気代の緩和措置を実施しました。
今回は、2023年における電気代の上昇幅、各電力会社の動き、政府の緩和措置について徹底解説します。電気代の推移を詳しく知りたい方は、ぜひ本記事の内容をご覧ください。
【2023年】電気代はどれくらい値上げされた?
2023年になり、物価やガス代、電気代などが高騰していますが、そのなかでも特に注目を浴びているのが電気代の値上がりです。過去数年と比較すると、近年は電気代が著しく値上げされています。
「東京電力エナジーパートナー」の料金を見ると、ここ数年で電気代が上昇していることが明らかです。
2020年1月分 | 2021年1月分 | 2022年1月分 | 2023年1月分 | |
1ヶ月の電気代(目安)※ | 7,127円 | 6,317円 | 7,631円 | 9,126円 |
参考:東京電力エナジーパートナー|過去の燃料費調整のお知らせ一覧
※ 従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月の場合で、再生可能エネルギー発電促進賦課金、口座振替割引額、消費税等相当額を含む
2020年1月分〜2023年1月分までの電気代の推移を見ての通り、ここ数年で電気代が急激に上昇しました。2020年1月〜2022年1月分までは、電気代の差がそこまで大きくありませんが、2023年1月分に至っては大きく上昇しています。
→一般家庭における電気代の相場|世帯数別・季節別の変動幅を詳しく解説
電気代が上昇する仕組み
電気代が上昇する仕組みは、複数の要素を分解することで理解が深まります。一般的な電気代は、以下3つの要素から構成されています。
電気代の構成要素 | 内容 |
基本料金 | 電力会社が契約プランごとに設定した固定料金 |
電力量料金 | 使用した電力量に応じて支払う料金 |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって電力会社等が買取りに要した費用を、電気の使用量に応じて電気料金の一部として支払う料金 |
このうち「電力量料金」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、1ヶ月間で使用する電力量に応じて料金が変動します。
そして、ここ数年の電気代が上昇している主な理由は、「電力量料金」に含まれる「燃料費調整単価」の上昇が原因です。「燃料費調整単価」は、電気を作るために必要となる燃料の調達コストによって変動します。
世界情勢に応じて燃料の調達コストが高騰すると、それに伴い「燃料費調整単価」も上昇するため、電気の使用量は同じでも毎月発生する電気代の総額が高くなってしまうのです。
【2023年】大手電力会社による電気代の値上げ推移
ウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰などを理由に、電気の規制料金(特定小売供給約款
料金)を改定するため、2022年11月および2023年1月に、大手電力会社7社が特定小売供給約款の変更認可申請を行いました。
それに伴い、大手電力会社は2023年4月〜6月にかけて電気代の値上げを実施しました。本項では、大手電力会社による電気代の値上げ推移を、電力会社別にそれぞれ解説します。主に2023年4月〜の値上げ幅を見ていきましょう。
北海道電力の電気代
北海道電力は2023年6月1日から、一般家庭向けの電気代を22.6%値上げしました。その背景には、2023年3月期の最終赤字が530億円という厳しい経営状況が影響しています。
また、法人向けについては2023年4月1日から、電気代の「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」を値上げし、「市場価格調整単価」を追加で請求しています。一般的なプランでは、電気代が約20%値上がりしました。
参考サイト:電気料金の見直しに関するお願いについて(個人のお客さま)|ほくでん
参考サイト:電気料金の見直しに関するお願いについて(法人のお客さま)|ほくでん
東北電力の電気代
東北電力は、2023年5月19日に経済産業大臣より小売規制料金の値上げについて認可をもらったことで、2023年6月1日から規制部門の利用者の電気代を平均25.47%値上げしています。
東北電力は2023年4月28日に、同年3月期の連結最終損益を発表しました。そこでの赤字額は、なんと1,275億円(前期の赤字は1,083億円)でした。赤字の主な理由は、燃料価格の高騰でコストがかさんでしまったとのことです。
法人向けについては、既に2022年11月より高圧および特別高圧の電気料金単価を値上げしていましたが、2023年4月にも値上げを実施しています。内訳としては「基本料金」と「電力量料金」が上昇し、その上で「市場価格調整単価」が追加で請求されるようになり、電気代がおよそ20〜30%上昇しました。
参考サイト:電気料金の見直しについて|東北電力
参考サイト:特別高圧・高圧でご契約のお客さまへの大切なお知らせ|東北電力
東京電力EPの電気代
東京電力EPも同様に、燃料価格の高騰と円安などが重なり、電気代の値上げが余儀なくされています。特に2023年3月期の連結業績において、経常損益が5,050億円という過去最大の赤字を記録したことが大きく影響しています。
それに伴い、2023年6月1日から、一般家庭向けの規制料金について平均15.90%の値上げを実施しました。また、法人の電気代についても、同年4月から標準料金を12〜14%引き上げています。
参考サイト:規制料金値上げの認可等について|TEPCO
参考サイト:特別高圧・高圧の料金メニュー(標準メニュー)の見直しについて|TEPCO
中部電力ミライズの電気代
中部電力ミライズは2023年4月1日より、高圧供給および特別高圧供給の電気代について値上げを実施すると発表しました。
中部電力パワーグリッド株式会社による託送供給等約款の見直し内容が、1月27日に認可されたことを受け、見直し前と比べて約8.6~9.4%の値上げを実施。あくまで目安ですが、一般家庭の場合、1ヶ月で109円ほどの差が生まれるとのことです。
なお、中部電力ミライズは高圧供給および特別高圧供給の電気代調整とともに、「電気料金の負担軽減策」も実施しました。軽減策の内容としては、2.09 円/kWh(税込)を毎月の「燃料費調整単価」から割引するというもので、軽減期間は2023年6月分~10月分までです。
参考サイト:2023年4月分電気料金の燃料費調整について|中部電力ミライズ
参考サイト:特別高圧・高圧の標準メニューの見直しについて|中部電力ミライズ
北陸電力の電気代
北陸電力もまた、2023年6月1日より一般家庭向けに電気代の値上げを行いました。改定率は平均39.70%で、電力量料金単価の改定が実施されました。また、電源構成や燃料価格の見直しに合わせて、「燃料費調整単価」における算定諸元の見直しも入っています。
法人については、2023年4月1日から電気代が25%前後上がっています。北陸電力の昨年度のグループ全体の決算では、火力発電所で使う燃料価格が高騰したことなどが要因となり、経常損益が937億円の赤字となりました。
参考サイト:電気料金の改定について|北陸電力
参考サイト:電気料金の改定について- 高圧・特別高圧のお客さま -|北陸電力
中国電力の電気代
中国電力は2023年6月1日より、平均26.11%の値上げを実施しました。この大幅な値上げの背景には、2022年度に連結・個別ともに過去最大の赤字を記録している事実があります。
これにより、電気の使用量が平均的な家庭の場合、これまでよりも1,667円の電気代の上昇が見込まれます。
しかし、その一方で低圧部門の自由料金を契約している家庭については、規制料金の値上げ幅の縮小を踏まえ、一部の料金メニューを値下げしました。それに伴い、平均的な家庭の場合は逆に300円ほど電気代が下がる見込みです。
参考サイト:規制料金の変更認可申請に係る補正および低圧自由料金の見直しについて|中国電力
参考サイト:電気料金メニューの見直しについて|中国電力
四国電力の電気代
四国電力も同様に、2023年6月1日から平均28.74%の電気代の値上げを行いました。対象プランを利用している一般家庭の場合、値上げ前と値上げ後では、1ヶ月で2,155円ほどの差が生まれます。
2022年度のグループ全体の決算は、最終的な損益が前年度から166億円悪化し、228億7,100万円の赤字を記録しました。この赤字拡大の主な要因としては、燃料価格の高騰や円安の影響で燃料の調達コストが大幅に増加したこと、さらに子会社を通じて出資している台湾の風力発電事業で、多額の損失を計上したことが挙げられます。
参考サイト:規制料金の値上げ認可について|四国電力
2023年に電気代が値上げされた主な理由
大手電力会社の値上げ理由は、主に以下の3つが考えられます。各理由が改善されない限り、今後も電気代の値上げが生じる可能性があります。
- ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰
- 急激な円安の影響
- 国内の電気供給力不足
それぞれの理由を1つずつ解説します。
理由1.ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰
電気代の値上げにおける直接的な原因として、天然ガス(LNG)や化石燃料の高騰があります。その根本的な理由を作った要素が、ロシアによるウクライナ侵攻による影響です。
ロシアは天然ガスの輸出額世界1位(2021年)、石油輸出額世界2位(2021年)の資源大国でした。しかし、ウクライナへの侵攻後、欧米諸国はロシアへの経済制裁の一環として、ロシアからの輸入を停止しました。
その結果、世界全体でエネルギーの争奪戦が起こり、この影響は日本にまで及んだため、燃料調達費の高騰を引き起こしたのです。
理由2.急激な円安の影響
近年日本で問題となっている急激な円安も、電気代の上昇に影響しています。円が安くなると海外からの輸入コストが増大します。その円安の期間が長引けば長引くほど、電力会社はコスト高騰の観点から、電気代の値上げを余儀なくされるのです。
特に、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰という外部要因が重なり、円安の影響をより一層強めました。このように、円相場は消費者が負担する電気代に直接的な影響をおよぼしています。
理由3.国内の電気供給力不足
国内の電気供給力不足も、電気代の上昇に一役買っています。その契機となったのは、2011年の東日本大震災に伴う太平洋沿岸の津波により、福島第一原子力発電所の原子炉が停止したことです。
原発不在による電力不足を補うため、電力会社は火力発電所での燃料使用量を増やしました。しかし、化石燃料の価格高騰と円安の影響により、火力発電を行うためのコストが高騰し、それによって電力受給者の支払う電気代が上昇したのです。
電気代の値上げに対する政府の緩和措置
政府は6月1日からの電気代の値上げに伴い、さまざまな取り組みを実施しています。取り組み内容や電気料金の変更については、経済産業省の「電気料金の改定について(2023年6月実施)」で詳細が記載されています。
なかでも注目すべきが、政府による「激変緩和措置」です。政府は現在、標準的な家庭の電気料金で月額2,800円の負担軽減を行っています。電気料金は上昇しているものの、「激変緩和措置」なども考慮すると、すべての電力会社でロシアによるウクライナ侵攻前(2022年2月)の水準を下回るか、同等の水準になる見通しです。
この緩和措置は、電気・都市ガス料金の上昇によって影響を受ける家庭や企業の負担を直接的に軽減することを目的としています。特別な手続きや申請は不要で、2023年1月以降の使用分(2月以降の請求分)が対象です。
詳しい内容については、請求書や検針票、Web明細、契約している電力・都市ガス会社のホームページでも確認できます。
まとめ
本記事では、2023年における電気代の上昇幅、各電力会社の動き、政府の緩和措置を詳しく解説しました。
大手電力会社は2023年の4月〜6月にかけて、電気代の大幅な値上げを実施しました。それに伴い、2022年に比べて家庭や企業の電気代が著しく上昇しています。
しかし、政府が「激変緩和措置」を設けた結果、すべての電力会社で電気代が2022年2月の水準を下回るか、同等の水準になる見通しが立っています。
なお、電気代の上昇によるデメリットを緩和したい場合は、ソーラーパネルと蓄電池(ポータブル電源)を導入し、太陽光発電システムで電気を自給自足することも1つの手です。EcoFlowでは折りたたみ式のソーラーパネルと様々な容量のポータブル電源を取り扱っており、長期的に電気代の節約を図りたい方におすすめです。