「災害が発生したらどのような段階を経て復興に向かうのだろう？」と疑問に思ったことはありませんか？
災害サイクルとは、災害発生から復興までの流れを「超急性期」「急性期」「亜急性期」「慢性期」「平穏期」の5段階で捉えた概念のことです。
各段階によって被災者のニーズや直面する課題が大きく変化するため、適切な時期に適切な支援を行うことが重要となります。
本記事では、災害サイクルの基本概念、各段階の被害・復旧状況のイメージ、効果的な対策方法について解説します。最後までご覧になれば、災害対応力を高めるための具体的な知識が得られるでしょう。
災害サイクルとは？
災害サイクルとは、災害の発生から復興までの一連のプロセスを時系列で捉えた概念のことです。被害状況や必要とされる支援内容が時間経過とともに変化していくことに着目し、各段階に適した対応を取るために体系化されました。
一般的に災害サイクルは以下の5段階に区分されています。
| フェーズ | 期間 |
| 超急性期 | 災害発生から48〜72時間 |
| 急性期 | 災害発生から72時間〜1週間 |
| 亜急性期 | 災害発生から2〜3週間 |
| 慢性期 | 災害発生から数ヶ月〜数年 |
| 平穏期 | 復興後の時期 |
それぞれの段階で被災者のニーズや直面する課題が異なるため、支援側はこのサイクルを理解し、各段階に適した対応を行うことが求められます。
特に医療や保健活動においては、各段階に応じた活動計画が被災者の生命と健康を守るために不可欠です。また、災害サイクルの考え方は、次の災害に備えるための教訓を得るうえでも重要な枠組みとなります。
災害サイクルと保健活動・医療救護活動の関係性
災害サイクルの各段階では、求められる医療ニーズが大きく異なるという特性があります。この特性を理解し、時期に適した保健医療活動を展開することが、被災者の健康被害を最小限に抑えるために極めて重要です。
例えば、災害直後や超急性期では医療救護が重要視され、外傷や急性疾患への救命救急対応が最優先されます。DMATなどの専門チームによる迅速な医療介入が生存率を左右します。
亜急性期や慢性期に移行すると、仮設住宅での生活再建が始まり、コミュニティの変化に伴う新たな健康課題が生じます。この段階では、地域保健活動の再開と強化が求められ、被災者の心身の健康を継続的に支える体制づくりが必要です。
平穏期には、次の災害に備えた医療体制の見直しや保健活動計画の策定が行われます。過去の経験から学び、より効果的な対応体制を構築することがこの時期の重要な任務です。
このように、災害サイクルの各段階に応じた医療保健活動を計画・実施することで、被災者の命と健康を守るための切れ目のない支援が可能となります。
災害サイクルごとの被害や復旧状況のイメージ
災害発生から復興までの各段階で、被害状況や復旧の進捗は大きく変化します。ここでは、災害サイクルの各段階における典型的な状況をイメージしやすいように解説します。
超急性期
災害発生から2〜3日間の超急性期は、生命の危機への対応が最優先される時期です。この段階では、倒壊建物からの救出や重傷者の救命処置など、一刻を争う活動が中心となります。
ライフラインは広範囲で遮断され、通信網の混乱により情報収集も困難を極めます。道路や橋の損壊により物資の輸送路が断たれ、被災地への外部からのアクセスが制限されるため、現場での限られた資源での対応が求められます。
この時期の被災者は、混乱と不安のなかで基本的な生活ニーズ（水・食料・避難場所など）の確保に奔走しており、組織的な支援体制がまだ確立していないことがほとんどです。
急性期
発生から1週間程度の急性期になると、避難所の設営や物資供給体制が整いはじめます。この時期は応急的な生活基盤が形成される一方で、新たな健康課題も浮上してきます。
ライフラインの部分的復旧が始まり、外部からの支援物資や救援隊が本格的に到着し始める時期です。避難所運営が軌道に乗り始め、食料・水・基本的な医療サービスの提供体制が確立されつつあります。
この段階では、情報伝達システムの回復により被害状況の全体像が徐々に把握されるようになり、より組織的で計画的な支援活動が可能になります。
亜急性期
災害発生から2週間から3週間程度の時期となる亜急性期では、避難生活の長期化に伴う新たな健康問題が表面化します。
避難所生活の長期化によるストレスや、プライバシー不足、不十分な栄養状態などが複合的に影響し、身体的・精神的健康問題が現れてくる時期です。
この段階では、仮設トイレの維持管理やごみ処理など、環境衛生対策が重要課題となります。また、長期間の避難生活や先行きの不安から生じる精神的ストレスにより、うつ状態や不眠などの心理的問題も増加するため、メンタルヘルスケアの需要が急増します。
慢性期
発生から数ヶ月以降の慢性期になると、避難所から仮設住宅への移行が進み、被災者の生活再建が本格化します。新たな環境での生活再構築という大きな転換期であり、コミュニティの再形成や就労機会の確保など、社会的側面の課題が顕著になります。
この時期には、従来の生活リズムや社会的つながりの喪失に伴う孤立感や無力感が増大し、アルコール依存症やうつ病などの発症リスクが高まります。
復興住宅への入居や職場復帰など、新しい生活への適応を支援するための包括的なアプローチが求められる時期です。
平穏期
災害の収束から次の災害に備える準備期間となる平穏期は、被災経験を次に活かすための重要なフェーズです。表面的には日常生活が戻っているように見えますが、被災体験の心理的影響はなお続いており、コミュニティの再構築やメンタルヘルスケアは継続的な課題です。
このフェーズでは、前回の災害対応の評価と検証が行われ、その教訓を活かした防災計画の見直しが求められます。
保健医療分野については、災害時の医療体制の強化や要配慮者の支援計画の充実、医療従事者の災害対応訓練など、次の災害に備えた準備が進められます。
災害サイクルに備えた取り組みや対策方法
災害の各段階に効果的に対応するためには、事前の準備と体制づくりが欠かせません。ここでは、災害サイクルに備えた具体的な取り組みや対策方法を紹介します。
- 医療情報をバックアップする
- 組織体制を正しく理解する
- 防災教育を行う
- 防災セットや看護用備品を用意する
以下、各方法について詳しく見ていきましょう。
医療情報をバックアップする
災害時に医療活動を継続するために、患者データの保全が極めて重要です。患者データの二重保存と遠隔地保管システムの構築を進めることが急務となります。
特に慢性疾患を抱える患者の治療履歴や処方内容は、災害時の適切な医療継続に不可欠な情報です。クラウド技術を活用した診療情報共有体制の事前整備も有効です。
複数の医療機関間でのデータ共有が可能になれば、被災者が避難先の医療機関でも適切な治療を継続して受けられるようになります。
組織体制を正しく理解する
災害時の指揮系統と役割分担を明確化した行動計画の策定が欠かせません。誰がどの段階で、どのような権限と責任を持つのかを事前に明確にしておくことで、混乱期の意思決定がスムーズになります。
定期的な検証訓練を通じて実効性を高める体制づくりも重要です。机上訓練だけでなく、実際の災害状況を想定した実動訓練を行うことにより、計画の不備を発見し、改善することができます。
また、さまざまな災害シナリオを想定した訓練を繰り返せば、予測不能な状況下でも柔軟に対応できる能力が養われます。
防災教育を行う
災害対応力を高めるためには、各サイクルで必要となる知識と技術を体系的に学ぶ機会を創出することが重要です。
医療従事者向けの専門的な災害医療研修だけでなく、一般住民向けの基本的な応急処置や避難行動の教育も不可欠です。実践的シミュレーションを通じた判断力養成は、被害軽減に直結します。
さまざまな災害シナリオを想定したケーススタディや、判断力を養うための図上訓練などを定期的に実施することで、いざというときの適切な判断能力を培うことができます。
また、過去の災害事例の教訓を共有し、「忘れない」取り組みも重要です。災害の風化を防ぎ、常に危機意識を持ち続けることが次の災害への備えにつながります。
防災セットや看護用備品を用意する
災害の各段階で必要となる物資は異なるため、サイクル別に必要物資を分類したキットの事前準備が有効です。
例えば、超急性期には救命処置用品や応急処置キットが、急性期から亜急性期には感染症対策用品や慢性疾患管理用品が重要となります。
定期的な内容確認と更新作業の習慣化も不可欠です。特に医薬品や医療機器は、定期的な動作確認と消毒・滅菌処理が求められます。
なお、一般的な防災セットの内容としては以下のようなものが挙げられます。
- 食料
- 飲料水
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
- ラジオ
- 非常用電源
- カセットコンロ
大きな災害が起きる前に、防災セットを抜かりなく揃えておくことが大切です。
→災害時に役立つ最強の防災グッズ18選｜本当に必要なものを徹底解説
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災害サイクルに関するよくある質問
最後に、災害サイクルに関するよくある疑問を解説します。
サイクルごとの期間は厳密に決まっている？
災害サイクルの各段階の期間は、災害の規模や種類によって変動することを理解しておく必要があります。
例えば、局地的な水害と広域的な地震災害では、各段階の移行速度が大きく異なります。
小規模災害では数日で急性期から亜急性期に移行することもありますが、東日本大震災のような大規模災害では、発生から1ヶ月以上経過しても一部地域では急性期の状況が続くケースもありました。
また、同じ災害でも地域によって復旧・復興の速度に差が生じることがあります。都市部と過疎地域では、インフラ復旧の優先順位や資源配分の違いから回復速度に差が出ることも少なくありません。
災害サイクルを知ることで何が変わる？
災害サイクルの理解は、限られた資源を最大限に活用するための戦略的思考を可能にします。各段階で必要とされる支援の種類や量を事前に想定できるため、適切なタイミングでの支援実施により効果的な資源活用が可能になります。
例えば、超急性期に必要なのは救命処置用品であり、生活再建支援の情報提供は亜急性期以降が適切なタイミングです。特に混乱期における優先順位の明確化は救命率向上に直接貢献します。
災害直後の混乱した状況では、何を優先すべきかの判断が難しくなりますが、サイクルの特性を理解していれば、その時点で最も重要な活動に資源を集中させることができるのです。
個人レベルでもサイクルを意識すべき？
自助力を大きく向上させるためにも、個人レベルでもサイクルを意識すべきと言えます。
例えば、超急性期には自分と家族の安全確保が最優先ですが、急性期以降は周囲の方々への支援も視野に入れた行動が可能になります。
家族の安全確保と地域貢献を両立させる行動計画の立案にも、サイクルの視点は有効です。
「発災から3日間は家族の安全確保に専念し、その後は可能な範囲で地域の復旧活動に参加する」といった具体的な行動指針を事前に家族で共有しておくことで、災害時の判断の迷いを減らせます。
まとめ
本記事では、災害サイクルの基本概念、各段階の被害・復旧状況のイメージ、効果的な対策方法について解説しました。
災害サイクルは「超急性期」から「平穏期」までの5段階に区分され、各段階で必要な支援内容が異なります。特に医療面では、救命救急から慢性疾患管理、メンタルヘルスケアまで、時期に応じた対応が求められます。
災害に効果的に備えるためには、医療情報のバックアップ、組織体制の理解、防災教育の実施などが重要です。
「EcoFlow DELTA 3 Plus」や「EcoFlow DELTA Pro 3」などの非常用電源は、急速充電機能とUPS機能を備え、災害時の電力確保に最適なソリューションを提供します。災害に強いコミュニティづくりのために、EcoFlow製品の導入をぜひご検討ください。