プレートの境界で断層がゆっくりと滑るスロースリップ。2024年8月には通常より短い間隔で発生しており、南海トラフ巨大地震が起きる前兆ではないか、と心配されている方も多いでしょう。日本では、過去にスロースリップが原因と見られる地震も観測されています。
そこで本記事では、スロースリップとはどんな現象なのかについて解説します。スロースリップと南海トラフ地震の関連性や、家庭でできるスロースリップへの備えも掲載しているので、地震対策を万全にしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
スロースリップ(SSE)とは

スロースリップとは、プレート境界の断層がゆっくり動いて、ひずみエネルギーを解放する現象です。高速で断層が動く地震のように地震波を放射せず、揺れを感じません。
スロースリップは、2000年代に入ってから日本で初めて検出されるようになりました。その後、世界中のプレート境界においても相次いで観測されています。
世界的に発生しているスロー地震の一種
スロースリップは、世界各地のプレート境界で発見されているスロー地震の一種です。スロー地震は大きく分けて、低周波微動(LFT)、超低周波地震(VLFT)、スロースリップ(SSE)の3種類に分類されます。それぞれの特徴は、以下のとおりです(※1)。
スロー地震の種類 | 特徴 |
低周波微動(LFT) | ・数Hz〜10Hzで振動する微弱な揺れ ・0.1~0.5秒周期で波が卓越する |
超低周波地震(VLFE) | ・0.01~0.05Hzで振動する超微弱な揺れ ・数十〜数百秒の長い周期で波が卓越する |
スロースリップ(SSE) | ・地震波を出さない ・数日から数年間にわたってすべりが継続する ・長期的スロースリップと短期的スロースリップに分かれる |
※1参考:地震本部「南海トラフ浅部で起きるスロー地震について分かってきたこと」
スロースリップは大地震の前兆?

スロースリップ単体で被害が生じるものではありませんが、近年は巨大地震との関連性が指摘されています。地震は、プレートの岩盤に蓄えられたひずみエネルギーが解放される現象です。ひずみエネルギーは、定常すべり域とスロースリップ領域の間で生産されます。
ひずみエネルギーは、短期的スロースリップが発生すると一部が隣り合う長期的スロースリップ領域に運搬されます。さらに、長期的スロースリップが発生するたびに、一部が周辺の地震発生領域へと運搬されるのです。
スロースリップが原因で地震発生領域にひずみエネルギーが蓄積されていくと、限界を迎えてエネルギーが解放され、地震につながる恐れがあります(※2)。
※2参考:一般財団法人 日本防火・防災協会「スロースリップと南海トラフ地震」
スロースリップと南海トラフ地震の関連性
南海トラフ地震とは、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖にかけての南海トラフを震源地として、過去に100年から150年程度の周期で発生している巨大地震です。南海トラフ沿いには、四国と九州の間から東海地方の直下まで続く短期的スロースリップ領域があります。
短期的スロースリップ領域では、毎月のようにスロースリップが発生しています。発生の度にひずみエネルギーは、浅い領域にある長期的スロースリップ領域へと運搬され、最終的にはさらに浅い領域にある地震発生領域へと運搬されているのです。
大きなスロースリップが発生して、ひずみエネルギーが一気に蓄積すると、南海トラフ地震の引き金になる可能性もあるでしょう。
過去に起きたスロースリップの事例3選

スロースリップと巨大地震の関連性は、過去に起きたスロースリップの事例によって解明されつつあります。日本で起きたスロースリップの事例は、以下のとおりです。
- 【2011年3月】三陸沖
- 【2024年2月】房総半島沖
- 【2024年8月】南海トラフ地震の想定震源域
それぞれの事例について、詳しく見ていきましょう。
【2011年3月】三陸沖
2011年3月に三陸沖で起きた東北地方太平洋沖地震では、本震の2日前に発生したマグニチュード7.3の前震後にスロースリップが生じていました。さらに東北沖では、スロースリップの発生に伴い6.2倍多くの地震が発生することも分かっています(※3)。
※3参考:東北大学「北海道〜関東地方の沖合で周期的なスロースリップを発見」
【2024年2月】房総半島沖
2024年2月下旬から房総半島沖では相次いで地震が発生していましたが、同時に最大約2cmのスロースリップも検出されています(※4)。千葉付近では、過去にも3年近くから6年半程度の間隔でスロースリップによる地震が発生していました。
※4参考:国土交通省 国土地理院「令和6年(2024年)2月 房総半島の非定常地殻変動」
【2024年8月】南海トラフ地震の想定震源域
2024年8月8日に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、気象庁から初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。地震が発生する前には、震源域深部延長のプレート境界面上でスロースリップが発生していたことが分かっています(※5)。
さらに、同じ領域ではほぼ2年おきにスロースリップが発生していましたが、地震の直前は約1年で発生していました。巨大地震の前にスロースリップの間隔が短くなるのは、事前のシミュレーションでも示されていました。
※5参考:国土交通省 国土地理院「地震前にゆっくりすべりの周期が短くなる現象を観測」
スロースリップに警戒!日頃の対策7選

スロースリップは、地震の震源域に影響を与えると指摘されています。プレート境界が多い日本では、いつどこで地震が起きるか分かりません。地震への対策は、以下のとおりです。
- 対策1|住宅の耐震化を進める
- 対策2|家具類の転倒防止対策を行う
- 対策3|感震ブレーカーを設置する
- 対策4|ハザードマップを確認する
- 対策5|地震発生時の行動を把握する
- 対策6|安否確認の方法を決めておく
- 対策7|防災グッズを準備する
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|住宅の耐震化を進める
南海トラフ地震は、住宅の耐震化を促進すると約77%も死者数が減少すると示されています(※7)。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物は、震度5程度の地震しか想定されていません。まずは、耐震診断を受けて、住宅の耐震性を測定しましょう。
※7参考:中央防災会議「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について」
対策2|家具類の転倒防止対策を行う
近年発生した地震の3〜5割は、家具類の転倒や落下が原因です(※8)。家具類の転倒・落下・移動を防ぐために、以下の流れで対策を講じてください。
- 生活空間にできるだけ家具を置かない
- 避難障害や怪我が起きにくいレイアウトを工夫する
- 対策器具で家具類と壁・床・天井を固定する
※8参考:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
対策3|感震ブレーカーを設置する
地震による電気火災を防ぐために、感電ブレーカーを設置しましょう。感電ブレーカーとは、地震を感知すると自動でブレーカーを落として電気供給を遮断する装置です。感電ブレーカーを設置しておけば、避難で余裕がない時や不在時でも電気火災が起きません。
対策4|ハザードマップを確認する
住んでいる地域における地震のリスクを判定するために、ハザードマップを活用しましょう。ハザードマップとは、地震による被害想定区域や避難所の場所が示された地図です。
地震の揺れやすさだけでなく、二次災害として起きる津波や土砂災害、液状化現象のリスクも確認できます。家族でハザードマップを見ながら、安全な避難場所を特定しましょう。
対策5|地震発生時の行動を把握する
地震発生時に身の安全を守るためには、冷静かつ迅速な対応が欠かせません。咄嗟の判断を誤ると、死に直結する恐れもあります。地震発生時の行動は、以下のとおりです。
- 丈夫な机やテーブルの下に潜り、脚をしっかり握る
- 揺れが収まったら、火元の始末を行う
- ドアや窓を開けて、逃げ道を確保する
- 家族の安全を確認する
- 非常用持ち出し袋を手元に用意する
- 地震に関する情報を収集する
- 必要に応じて避難する
対策6|安否確認の方法を決めておく
地震が発生すると、通信回線が混雑して電話やメールが繋がりづらくなります。通信障害が起きている状況を想定して、家族の間で安否確認の方法を決めておきましょう。地震発生時におすすめの連絡手段は、以下のとおりです。
安否確認の方法 | 内容 |
災害用伝言ダイヤル(171) | 電話番号を中心に、伝言を音声で登録・再生できる |
災害用伝言板(web171) | 電話番号中心に、伝言をテキストで登録・閲覧できる |
対策7|防災グッズを準備する
地震発生時は、交通機関が被害を受けて物流が止まる恐れがあります。店舗も営業を中止していると、必要な物資が簡単には手に入りません。避難所や自宅での避難生活を想定して、以下の防災グッズを準備しておきましょう。
- 飲料水
- 非常食
- 携帯ラジオ
- 衛生用品
- 懐中電灯
- 救急セット
- ポータブル電源
飲料水や非常食は、最低でも3日から1週間分を備えておくと安心です。日頃から多めに購入しておき、消費したら補充するローリングストックを活用すれば、無理なく備蓄できます。
関連記事:液状化現象とは?起こりやすい場所や地盤の液状化対策もわかりやすく解説
巨大地震による停電時に活躍するポータブル電源

スロースリップが発生するたびに、地震発生領域のひずみエネルギーが蓄積していくため、巨大地震のリスクは高まると言われています。特に南海トラフ地震は、今後30年以内に80%の確率で起こると言われており、いつ発生してもおかしくありません。
地震による大規模な停電に備えるためには、ポータブル電源が必要です。ポータブル電源とは、内部に大量の電気を蓄電し、停電中も電化製品に給電できる機器を指します。地震による停電時にポータブル電源が活躍する場面は、以下のとおりです。
- エアコンや扇風機などの冷暖房機器を稼働して、快適な気温を維持できる
- 電子レンジや電気ケトルを稼働して、簡単に非常食を温められる
- 冷蔵庫に給電して、食品が傷むのを防ぐ
- LEDライトを点灯させて、夜の明かりを確保できる
- 地震情報を確認するための携帯ラジオを常にフル充電にしておける
- スマホを使って、常に家族と確認が取り合える
ソーラーパネルと併用すれば、停電中に充電が切れる心配もありません。
地震対策に必要な性能|おすすめの製品
巨大地震への対策として導入するポータブル電源は、自宅が被害想定区域に入っているかによって選び方が異なります。津波や土砂災害などの被害が予想される場合は、迅速な避難が必要なので、軽量かつコンパクトなタイプを選びましょう。
一方、自宅が被害想定区域に入っていない場合は、在宅避難を想定して高出力・大容量のタイプが最適です。地震による停電は、復旧するまでに3日以上を要する場合もあります。
EcoFlowは、用途に応じて以下のポータブル電源を販売しています。
- 移動避難「RIVER 3 Plus」
- 在宅避難「DELTA 3 Plus」
それぞれの機種について、詳しく見ていきましょう。
移動避難「RIVER 3 Plus」
定格出力600W、容量286Whのポータブル電源。約4.7kgの軽量コンパクト設計なので、避難の妨げになりません。X-Boostで最大900Wの出力を誇り、避難所では自宅にある90%の家電に給電できます。ACコンセントからは、わずか1時間で満充電が可能です。
LEDライトを搭載しているので、夜間の避難時や避難所生活でも安全を確保できます。30dB以下の静音設計により、周囲の被災者に気兼ねなく家電が使えるでしょう。

在宅避難「DELTA 3 Plus」
定格出力1500W、容量1024Whのポータブル電源。最大2000Wの高出力を誇り、容量を最大5kWhまで拡張できるので、大家族や長期間の停電生活でも安心です。ソーラーパネルを使えば、停電中でもわずか70分で満充電できます。
停電が起きると、電気供給源がポータブル電源へと10ms未満で切り替わります。重量12.5kgの小型設計なので、家中どこでも気軽に持ち運べるでしょう。

スロースリップとは何かに関するよくある質問

最後に、スロースリップとは何かに関するよくある質問を紹介します。
- スロースリップとはどういう現象かを簡単に説明すると?
- 揺れ・津波のないスロースリップを観測するには?
- 短期的・長期的スロースリップの違いは?
- 南海トラフでスロースリップが起きる場所は?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
スロースリップとはどういう現象かを簡単に説明すると?
スロースリップとは、プレートの境界で断層がゆっくりと滑る現象です。通常の地震のように、強い揺れを伴いません。断層が滑る速度は、地震が1秒間に約1mと高速なのに対し、スロースリップは地震の10万〜100万分の1程度と低速です。
揺れ・津波のないスロースリップを観測するには?
国土交通省の国土地理院は、全国に約1,300点のGNSS連続観測点を設置し、24時間連続で地表の動きを監視しています(※9)。スロースリップによってひずみエネルギーが解放されると、通常とは異なる地殻変動が生じるため、スロースリップを観測できるのです。
※9参考:国土交通省 国土地理院「GEONET(GNSS連続観測システム)とは」
短期的・長期的スロースリップの違いは?
短期的スロースリップは、数日間をかけて滑るのに対し、長期的スロースリップは、数ヶ月から数年をかけてゆっくり滑ります。短期的スロースリップが発生する領域は、長期的スロースリップが発生する領域よりも、約30〜40kmほど深い場所です。
南海トラフでスロースリップが起きる場所は?
南海トラフ地震沿いでは、四国と九州の間に位置する豊後水道直下から東海地方直下までの領域で、毎月場所を変えながら短期スロースリップが発生しています(※2)。
一方、長期的スロースリップは、短期スロースリップの領域よりも浅い場所で、数か所に分かれて発生しているのが特徴です。数年に1回のペースで発生しています。
まとめ

本記事では、スロースリップとはどんな現象かについて解説してきました。
スロースリップとは、プレートの境界で断層がゆっくりと動き、ひずみエネルギーを解放する現象です。通常の地震は断層が高速で動くため、揺れを発生させます。一方のスロースリップは、地震の10万〜100万分の1程度でゆっくり動くため、揺れが生じません。
近年の研究では、スロースリップと地震がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられています。南海トラフ沿いでもスロースリップが定期的に発生しており、いつ巨大地震が起きてもおかしくありません。地震対策として、住宅の耐震化や防災グッズの備蓄が必須です。
EcoFlowは、地震による停電時でも電化製品を動かせる高出力・大容量のポータブル電源を販売しています。停電対策を万全にしたい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。