普段使用している電気機器には、定格電流が定められています。定格とは、機器や装置が安全に動作するための使用限度を指す言葉です。定格電流とは何かを十分に理解していなければ、過度な電流が電気機器に流れて大事故につながる恐れがあります。
そこで本記事では、定格電流とは何かについて詳しく解説します。モーターやブレーカー、ヒューズにおける定格電流や、定格電流を超えないための対策も掲載しているので、電気機器を安全に使用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
定格電流とは

定格電流とは、電気機器を安全に使用できる最大の電流値を指します。コンセントをよく見てみると「15A 125V」と書かれているのが分かるでしょう。コンセントの一般的な規格では、定格電流が15A、定格電圧が125Vです。
万が一、定格電流を超える電流が流れてしまったとしても、ブレーカーがあれば自動的に電流を遮断してくれるので問題ありません。しかし、ブレーカーがなかったり、壊れていたりする家庭では、最悪の場合、火災へと繋がる恐れがあります。
モーターやブレーカー、ヒューズにおける定格電流についても確認しておきましょう。
モーターにおける定格電流とは
モーターにおける定格電流とは、停止時に連続でモーター巻線に流せる最大の電流値を指します。定格電流を超えた状態でモーターが運転を続けると過負荷運転になり、温度上昇によってモーターの焼損につながる恐れがあります。
大型のモーターになると電流値が数百〜数千Aに達するケースもあるので、定格電流を超えない範囲で制御しなければなりません。
ブレーカーにおける定格電流とは
ブレーカーにおける定格電流とは、ブレーカーに連続して流せる最大の電流値です。各フレームサイズごとに、10Aタイプや15Aタイプなど数種類あります。
サーキットブレーカーや漏電ブレーカーは、定格電流を超える電流が一定時間以上流れると、自動的に回路を遮断する仕組みです。ただし、定格電流の105%までは、ブレーカーが動作しないように設計されています。
ヒューズにおける定格電流とは
ヒューズとは、回路に過負荷電流が流れた際に溶断して回路を遮断する安全装置です。ヒューズにおける定格電流とは、定常的に流れても溶断しない最大の電流値を指します。
定格電流は、定常電流の電流ディレーティングと温度ディレーティングを考慮して決定されます。ヒューズの定格電流は、ヒューズボックスを開けた上部に表示されているのが特徴です。
定格電流の関連用語を簡単に解説

電気機器に関する説明書や解説サイトを読んでいると、定格電流に似た文言が数多く登場します。電気機器を安全に使用するためには、関連用語の理解も欠かせません。定格電流の主な関連用語は、以下のとおりです。
- 定格電圧
- 最大定格電流(最大電流)
- 限度電流
- 許容電流
それぞれの関連用語について、詳しく見ていきましょう。
定格電圧とは
定格電圧とは、電気機器が正常な動作環境で安全に使用できる最大の電圧です。コンセントの規格では、定格電圧が125Vに設定されています。
定格電圧を超える電圧が印加すると、絶縁破壊、過熱、部品の劣化などが生じます。ただし、一般家庭のコンセントは100Vなので、定格電流に比べると定格電圧は重要ではありません。
最大定格電流(最大電流)とは
最大定格電流とは、絶対に超えてはならない最大の電流値です。電気機器によっては、一瞬でも最大定格電流を超えると、製品の品質を損なったり故障したりする場合があります。回路内で複数の出力が影響している場合、複数の出力は同時に最大定格電流を流せません。
限度電流とは
コードリールにおける限度電流とは、電線を全て引き出した状態で使用できる最大の電流値です。限度電流は、定格電流よりも高く設定されています。
電線を巻いたままの状態では定格電流までしか使えませんが、電線を引き留めマークまで引き出すと限度電流まで使えるようになります。限度電流は、電線を全て引き出した状態で流しても、温度が60℃を超えない範囲内の値です。
許容電流とは
許容電流とは、電線やケーブルの種類やサイズごとに決められている適正な電流です。ケーブルには電気抵抗があり、電気を流すとジュール熱を生じます。
ケーブルに大量の電気を流すと、ジュール熱が増えてケーブルの温度も上昇し、絶縁物の劣化につながります。最悪の場合は、ケーブルが溶解して火災にまで発展しかねません。許容電流は、ジュール熱による事故を防ぐために設定されている上限値です。
【変圧器の種類別】定格電流の計算式とは

変圧器(トランス)とは、電圧を所定の値に調節する機器です。発電所で作った電力を送る送電線には抵抗があり、電流が大きいほど電力の一部が熱として逃げてしまいます。そこで、高圧で送電して電流を抑えれば、電力の損失を最小限に食い止められるのです。
高圧の電力のままでは各施設で使用できないため、以下の変圧器が用いられます。
- 単相変圧器
- 三相変圧器・スコット結線変圧器(一次側)
- スコット結線変圧器(二次側)
それぞれの定格電流の計算式について、詳しく見ていきましょう。
単相変圧器
単相変圧器とは、単相の電力を受け入れて、異なる電圧に変換する装置です。単相とは、一般家庭やオフィスで小さな電気を送る際に使用される送電方法を指します。単相変圧器における定格電流の計算式は、以下のとおりです。
定格電流(A) = (定格容量(kVA)× 1000) / 定格電圧(V)
三相変圧器・スコット結線変圧器(一次側)
三相変圧器とは、三相の電力を受け入れて、異なる電圧に変換する装置です。三相とは、大型設備に大きな電気を送る際に使用される送電方法を指します。
また、スコット結線変圧器とは、三相から二相に変換する変圧器です。三相変圧器とスコット結線変圧器(一次側)における定格電流の計算式は、以下のとおりです。
定格電流(A) = (定格容量(kVA)× 1000 )/ (定格電圧(V)× √3)
スコット結線変圧器(二次側)
スコット結線変圧器の二次側では、位相の90°異なった単相回路が2つ得られます。各単相負担が等しい場合、一次側は平衡三相電流となるため、電源側の三相発電機に悪影響を与えません。スコット結線変圧器(二次側)における定格電流の計算式は、以下のとおりです。
定格電流(A) = (定格容量(kVA)÷ 2 × 1000 )/ (定格電圧(V)× √3)
定格電流を超えて電気を使うリスクとは

定格電流を超えて電気機器を使用した場合、過熱や発火が起きて故障につながる恐れがあります。定格電流の120%で1時間通電しても故障しない場合もありますが、わずか5分で故障する場合もあります。故障までいかなくても、電気機器の急速な劣化につながるでしょう。
定格電流を超えないための対策4選

電流は目に見えないので、普段から定格電流を意識していなければ、知らぬ間に電気機器の寿命を縮めている可能性があります。定格電流を超えて一定時間が経過すると、電気機器は突如として動作が停止します。定格電流を超えないための対策は、以下のとおりです。
- 対策1|電気機器の消費電力を確認する
- 対策2|電源タップや延長コードの定格電流を確認する
- 対策3|タコ足配線を避ける
- 対策4|高出力機器の同時使用を避ける
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|電気機器の消費電力を確認する
電気機器の消費電力を確認すれば、電流値が特定できます。消費電力(W)の計算式は、電流(A)× 電圧(V)です。国内では100Vの電気が供給されているので、消費電力を100で割れば、電流値が導き出せます。
例えば、600Wの電子レンジと1000Wのトースターを1つのコンセントで同時に使用するケースを想定します。電子レンジの電流は6A、トースターの電流は10Aなので、コンセントに流れる電流は16Aです。定格電流15Aを超えているため、故障のリスクが発生します。
対策2|電源タップや延長コードの定格電流を確認する
電源タップや延長コードは、定格電流を超えやすい機器です。電源タップとは、複数の差し込み口がある延長コードを指します。電源タップや延長コード自体に定格電流が決められているので、事前に確認してください。
電源タップや延長コードに接続する電気機器の消費電力の合計が、定格電流を超えないようにしましょう。差し込み口が増えたからといって、全体の定格電流は増えません。
対策3|タコ足配線を避ける
電源タップを利用してコンセントよりも多い数の家電をつなぐ状態を「タコ足配線」と呼びます。定格電流を超えないために、以下のタコ足配線を避けましょう。
- 複数の電源タップや三角タップを接続する
- 電源タップのコードを束ねる
- 古い電源タップを使用する
対策4|高出力機器の同時使用を避ける
消費電力の高い電気機器は、同時に使用しないよう注意してください。特に電源タップや三角タップに高出力機器を複数台接続する場合、高確率で定格電流を超えるでしょう。同時使用は避けるべき、高出力機器は以下のとおりです。
電気機器 | 消費電力 | 電流値(100Vの場合) |
炊飯器 | 1000W | 10A |
電気グリル | 1150W | 11.5A |
電子レンジ | 1300W | 13A |
電気ケトル | 1500W | 15A |
ヘアドライヤー | 1600W | 16W |
定格出力が定められるポータブル電源とは

コンセントの規格では定格電流が15Aに設定されているため、合計の消費電力が1500W以上になる家電は接続できません。しかし、ポータブル電源から給電すれば、合計の消費電力が1500Wを超える複数の高出力家電も安全に稼働できます。
ポータブル電源とは、内部のバッテリーに大量の電気を溜め込み、コンセントを使わずに電化製品に給電できる機器です。ポータブル電源には、定格電流の代わりに定格出力が定められています。定格出力(W)とは、装置が安定して出力できる最大の電力量です。
ポータブル電源の中には、定格出力が1500Wを超える製品も存在するため、コンセントからでは不可能な高出力家電への同時給電が実現します。ポータブル電源はコンセントから独立しているため、停電中や屋外でも問題なく家電を動かせるのが魅力です。
家庭用に必要な性能|おすすめの製品
家庭で高出力家電を複数台稼働するためには、定格出力が3000W以上のポータブル電源を選びましょう。定格出力が3000W以上で同時に動かせる家電は、以下のとおりです。
家電 | 消費電力 |
電子レンジ | 1300W |
炊飯器 | 1000W |
洗濯機 | 500W |
冷蔵庫 | 120W |
また、パワフルな稼働が必要となるエアコンや床暖房、オーブンレンジなどをポータブル電源から動かすには、200Vに対応している必要があります。
本サイトを運営するEcoFlowは、定格出力3600W・出力電圧100V/200Vのポータブル電源「DELTA Pro 3」を販売しています。「DELTA Pro 3」の特徴は、以下のとおりです。
- 単相3線式により、分電盤に接続して家庭用蓄電池としても活躍する
- 移動に便利なキャスターと取っ手がついている
- X-Boost機能で最大5100Wの家電を稼働できる
- 最大2600Wのソーラー充電に対応し、最短約2.2時間で満充電できる
- 4kWhの大容量バッテリーを搭載し、最大12kWhまで拡張できる
- リン酸鉄リチウムイオンバッテリーにより、10年以上の長寿命を誇る
- スマホのTOU(時間帯別料金)モードで、電力使用を効率的に管理できる
7つのAC出力ポートと4つのUSBポートを搭載しているので、同時に複数台の高出力家電を動かせます。自宅の節電対策や停電対策だけでなく、アウトドアや現場作業などの幅広いシーンで高出力家電を動かしたい方は、ぜひ製品情報をチェックしてください。

定格電流に関するよくある質問

最後に、定格電流に関するよくある質問を紹介します。
- インバーターの選定時に着目すべき定格電流とは?
- ポンプの電流値が定格電流より小さい場合のリスクは?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
インバーターの選定時に着目すべき定格電流とは?
インバーターの容量を選定する際は、接続するモーターの電流を基準にします。加速や減速時の電流が、インバーターが持つ定格電流の1.5倍以内に収まるようにしましょう。
インバーターとモーターが一台ずつの場合は、インバーターの定格電流がモーターの定格電流の1.1倍以上になる必要があります。インバーターの定格電流は、カタログ仕様欄を確認してください。
ポンプの電流値が定格電流より小さい場合のリスクは?
ポンプの定格電流とは、ポンプを定格出力の状態で運転した際に流れる電流です。定格出力は、製品ごとにポンプを連続使用しても安全に動作する値で決められています。
ポンプの電流値が定格電流より遥かに小さい場合に考えられるのは、ポンプの空転です。ポンプが空転すると、内部での摩擦熱が大きくなり、部品の故障につながります。
まとめ

本記事では、定格電流とは何かについて解説してきました。
定格電流とは、電気機器を安全に使用できる最大の電流値です。定格電流は、コンセントや電源タップ、モーター、ブレーカー、ヒューズなどに定められています。
電流値が定格電流を超えた場合は、電気機器の故障や火災などのリスクがあるため注意しなければなりません。特に電源タップで差し込み口を増やす場合は、接続する家電の消費電力の合計が、電源タップの定格電流を超えないようにしましょう。
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