南海トラフ地震といえば、南海トラフ周辺の太平洋側で一気に巨大地震が発生すると思われている方は多いのではないでしょうか。しかし、東側と西側の震源域が時間差でズレた場合、2度の巨大地震が日本を襲う「半割れ」に見舞われる恐れがあります。
そこで本記事では、南海トラフ地震が半割れケースだった場合の被害について解説します。半割れの南海トラフ地震に備えて今できることも掲載しているので、連続する巨大地震から家族の命を守りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
南海トラフ地震で想定される半割れとは

今後30年以内に80%の確率で起きると言われている南海トラフ地震(※1)。最大震度7が想定される巨大地震は、半割れのケースに該当する可能性があります。半割れとは、東側の震源域と西側の震源域が時間差でずれ動くケースです。
1回目の地震で受けた甚大な被害に対して救助や復旧活動を行っている最中に、別の地域でも巨大地震が発生するため、現場は混乱に陥ります。また、大きな地震が同じエリアで二度起きた場合、建物の倒壊リスクはさらに高まるのです。
※1参考:地震本部「南海トラフで発生する地震」
全割れや一部割れとの違い
南海トラフ地震は、半割れだけでなく、全割れや一部割れのケースも想定されています。全割れとは、南海トラフの想定震源域が一気に破壊され、南海トラフ沿いの全ての地域で被害が生じるケースです。1707年に起きた「宝永地震」が、全割れのケースに該当します。
一方の一部割れとは、南海トラフの想定震源域のうち、狭い領域のみが破壊されるケースです。全割れや半割れと比較すると、限られた範囲で被害が生じます。7日以内に大規模な後発地震が発生する確率は、数百回に1回程度しかありません。
南海トラフ地震【半割れ】の被害想定5選

2014年に内閣府が南海トラフの被害想定を算出してから約10年が経過したため、2025年3月31日に新たに算出された被害想定が公表されました(※2※3)。南海トラフ地震の半割れケースにおける主な被害は、以下のとおりです。
- 被害1|建造物の損傷
- 被害2|人的被害
- 被害3|救助の遅延
- 被害4|交通インフラの停止
- 被害5|ライフラインの停止
それぞれの被害想定について、詳しく見ていきましょう。
※2参考:内閣府「南海トラフ巨大地震 時間差をおいて発生する地震の被害想定について」
※3参考:中央防災会議 防災対策実行会議「南海トラフ巨大地震対策について(報告書)」
被害1|建造物の損傷
半割れケースにおいて、先発地震で損傷した建物は、後発地震で先発地震と同程度の揺れを受けた場合、損傷が拡大します。また、後発地震による液状化や津波、急傾斜地崩壊、地震火災、津波火災によっても、建物の損壊は拡大する見込みです。
マグニチュード8クラスの揺れによる全壊数は、先発地震の東半割れで約684,000棟、後発地震の西半割れで約594,000棟と想定されています。
被害2|人的被害
半割れの南海トラフ地震では、津波や建物の倒壊、地震火災などによって多くの死者が出ます。特に先発地震で損傷した建物を継続して利用していた場合、後発地震で倒壊するリスクは高まり、死傷者が増大するでしょう。
東半割れの死者は7万3,000人、西半割れの死者は10万3,000人の想定です。ただし、先発地震を受けてから適切な行動が取れれば、後発地震での死者を大幅に軽減できます。
被害3|救助の遅延
南海トラフ地震が半割れのケースであった場合、被災地への救助が全割れよりも遅延する可能性があります。ただでさえ南海トラフ地震は、茨城県から沖縄県にかけての広範囲で被害が予想されているため、道路や海路の寸断によって迅速に駆けつけるのは難しいでしょう。
大規模な災害時に全国の被災地へと駆けつける「緊急消防援助隊」は、派遣計画によって部隊ごとに派遣される被災地が決まっています。しかし、先発地震で大きな被害が予想される重点受援県では、被害の大小によらず地元の活動に留まるよう定められているのです。
後発地震に備えるための派遣計画ですが、結果的に救助の遅れを助長させる可能性があります。72時間以内に被災地へ到着できる部隊数は、わずか全体の45%です(※4)。
※4参考:NHK「3日で助けは来ない? 南海トラフ巨大地震 消防の救助は」
被害4|交通インフラの停止
南海トラフ地震の半割れケースでは、交通インフラが停止する事態にまで発展します。各交通施設が南海トラフ地震の半割れによって被害を受けた際の状況は、以下のとおりです。
交通施設 | 被害の状況 |
道路 | ・後発地震による津波を警戒して、沿岸部から内陸部に向かう車で渋滞する ・先発地震で損傷を受けた道路が、後発地震で崩壊して閉塞する |
鉄道 | ・後発地震の影響が警戒される地域で、運休や減速運転が行われる ・先発地震で被害を受けた箇所が、後発地震でさらに被害を拡大させる |
港湾 | ・港湾関係者の避難が求められ、港湾機能が停止する ・先発地震で発生したがれきを除去しきれないまま、後発地震の津波被害を受けて、被害が拡大する |
空港 | ・滑走路等の損傷によって離陸困難となり、一部運休が発生する ・被害地域で欠航が相次ぎ、大量の帰宅困難者が発生する |
被害5|ライフラインの停止
南海トラフ地震の半割れケースでは、揺れや津波、地震火災などで設備が損傷を受けると、ライフラインが停止します。南海トラフ地震の半割れケースがライフラインに与える主な影響は、以下のとおりです。
ライフラインの種類 | 影響 |
電気 | ・津波や揺れにより、供給側設備や送配電網が被害を受ける ・後発地震により、新たな発電所が機能を停止する・後発地震の被害拡大により、先発地震で被害を受けていた発電所の復旧作業が遅延する |
ガス | ・揺れが大きいエリアで安全措置として供給が停止する ・都市ガスの燃料となるLNG輸送船が入港できず、停止する・後発地震で新たなガス供給施設が被災し、機能を停止する |
水道 | ・管路、ポンプ場、浄水場が被害を受け、断水する ・後発地震で被害エリアが拡大し、飲料水や生活用水の需要が高まることで、給水タンク車が不足する |
過去に南海トラフで起きた半割れ地震

南海トラフ地震は、概ね100〜200年の間隔で繰り返してきました。過去に起きた南海トラフ地震の大半は、半割れのケースに該当します。直近300年を見てみると、全割れのケースに該当したのは1707年の「宝永地震」のみです。
直近に南海トラフで起きた半割れ地震の事例は、以下のとおりです。
- 【1854年】安政東海地震・安政南海地震
- 【1944年・1946年】昭和東南海地震・昭和南海地震
それぞれの事例について、詳しく見ていきましょう。
【1854年】安政東海地震・安政南海地震
1854年12月23日に紀伊半島南東沖から駿河湾にかけて「安政東海地震」が発生しました。そのわずか31時間後の12月24日には、紀伊水道から四国沖を震源とした「安政南海地震」が発生しています(※5)。いずれもマグニチュード8クラスの巨大地震です。
「安政東海地震」では三重県、「安政南海地震」では高知県で、20mを超える津波に襲われたと記録に残っています。伊豆から四国にかけての広範囲で死者数千人、倒壊家屋30,000棟以上の甚大な被害をもたらしました。
※5参考:内閣府「報告書(1854 安政東海地震・安政南海地震)」
【1944年・1946年】昭和東南海地震・昭和南海地震
1944年12月7日に熊野灘を震源とするマグニチュード7.9の「昭和東南海地震」が発生しました(※6)。地震発生の5〜15分後には、三重県で8〜10mの津波に見舞われています。
その2年後である1946年12月21日には、和歌山県南方沖を震源とするマグニチュード8.0の「昭和南海地震」が発生しました。昭和南海地震から現在に至るまでの約80年間、南海トラフ地震は起きていません。
※6参考:気象庁「昭和東南海地震の概要」
南海トラフの半割れにおける正しい行動

南海トラフ地震の半割れケースでは、先発地震の発生直後に正しい行動をとれば、二次災害による被害だけでなく、後発地震の被害も軽減できます。南海トラフの半割れにおける正しい行動は、以下のとおりです。
- 揺れを感じたら、頑丈なテーブルの下で身を守る
- 揺れが収まったら、ドアや窓を開けて出口を確保する
- 火元の確認と消火活動を行う
- 避難指示が発令されたら、速やかに避難する
先発地震の発生直後は常に後発地震のリスクがあるため、先発地震が落ち着いたからといって、避難指示が解除されるまでは自宅や沿岸部に引き返してはいけません。
南海トラフ半割れ地震に備えて今できること5選

南海トラフ地震の半割れケースでは、マグニチュード8クラスの巨大地震が二度にわたって襲ってきます。自分や家族の命を守るために今できることは、以下のとおりです。
- 1|ハザードマップを確認する
- 2|住宅・建造物の耐震化を進める
- 3|避難訓練に参加する
- 4|感震ブレーカーを設置する
- 5|防災グッズを備蓄する
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
1|ハザードマップを確認する
南海トラフ地震の半割れケースによる自宅周辺の危険エリアを確認するには、ハザードマップが必要です。ハザードマップとは、被害想定区域や避難場所が記されたマップを指します。確認できる内容は、最大の津波浸水区域や震度分布図、液状化の危険度などです。
2|住宅・建造物の耐震化を進める
半割れケースは全割れよりも甚大な建物被害を及ぼすため、住宅・建造物の耐震化が欠かせません。耐震化率が100%になると、全壊棟数は約7割も減少させられます。
特に1981年以前に建てられた建物は耐震性が低いため、耐震改修が必要です。まずは、耐震診断を受けて、耐震改修の要否を判断しましょう。
3|避難訓練に参加する
実際に南海トラフ地震の発生から避難完了までをシミュレーションしておきたい方は、自治体主催の避難訓練に参加するのがおすすめです。避難訓練で行う主な内容を紹介します。
- 地震発生直後の安全確保行動を行う
- 自宅で避難準備を行う
- マップを頼りに目的地まで徒歩で避難する
4|感震ブレーカーを設置する
南海トラフ地震の半割れケースに備えて感震ブレーカーを設置すれば、出火件数を大幅に減らせます。感震ブレーカーの設置率が100%になった場合、火災による死者数は約52%減です。感震ブレーカーとは、地震の揺れを感知して自動で電気を止める機器を指します。
5|防災グッズを備蓄する
南海トラフ地震の半割れでは、交通施設の損壊や、後発地震を警戒した渋滞により交通機関が停止します。それに伴い物流機能も停止するため、必要なものがすぐに手に入りません。日頃から、以下の防災グッズを備蓄しておきましょう。
- 飲料水
- 非常食
- 懐中電灯
- 携帯ラジオ
- 衛生用品
- 救急用品
- ポータブル電源
南海トラフの半割れ対策!ポータブル電源とは

南海トラフ地震の半割れケースでは、1週間以上の大規模な停電に見舞われる恐れがあります。停電中も電化製品を動かすには、ポータブル電源が欠かせません。ポータブル電源とは、コンセントが使えない状況でも、バッテリーから電化製品に給電できる機器です。
南海トラフ地震の停電時にポータブル電源が活躍する場面を紹介します。
- エアコンや扇風機などの冷暖房機器を稼働して、快適な気温を維持できる
- 電子レンジや電気ケトルを稼働して、簡単に温かい料理が作れる
- 冷蔵庫に給電して、食品が傷むのを防ぐ
- LEDライトを点灯させて、夜でも安全に避難できる
- 情報収集や連絡手段になるスマホを常にフル充電にしておける
ポータブル電源は携帯性に優れているため、在宅避難以外に避難所でも活躍します。
地震による停電対策に必要な性能|おすすめの製品
南海トラフ地震の停電対策として用意するポータブル電源は、在宅避難用として高出力・大容量のタイプ、避難所避難用として小型・軽量のタイプを選びましょう。
EcoFlowは、用途別に以下のポータブル電源を販売しています。
- 避難所避難「RIVER 3 Plus」
- 在宅避難「DELTA 3 Plus」
それぞれの機種について、詳しく見ていきましょう。
避難所避難「RIVER 3 Plus」
定格出力600W、容量286Whのポータブル電源。約4.7kgの軽量コンパクト設計なので、半割れのケースで巨大地震が連続しても迅速な避難が実現します。
30dBの静音設計により、避難所で使用しても他の被災者の迷惑になりません。最大900Wの出力を発揮し、避難所で電気毛布やケトル、防災ラジオなど幅広い家電を動かせます。

在宅避難「DELTA 3 Plus」
定格出力1500W、容量1024Whのポータブル電源。在宅避難中に停電が起きても、最大2000Wまでの家電に給電できます。最大5kWhまで容量を拡張できる点も魅力です。
高度な電源自動切り替え機能を搭載しており、停電が起きると10ms未満で電気供給源がポータブル電源に切り替わります。ソーラーパネルを使えば、最短70分で満充電が可能です。

南海トラフの半割れに関するよくある質問

最後に、南海トラフの半割れに関するよくある質問を紹介します。
- 南海トラフで半割れの地震が時間差で起きる確率は?
- 南海トラフ地震は半割れと全割れのどっちが怖い?
- 南海トラフの半割れは東西のどっちが先ですか?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
南海トラフで半割れの地震が時間差で起きる確率は?
マグニチュード8クラスの先発地震が起きた後に、同程度の後発地震が起きる確率は、1日以内で1.4%〜64%です(※7)。1週間以内に連続する確率は2.1%~77%、3年以内に連続する確率は4.3%~96%と次第に高くなっています。
※7参考:NHK「南海トラフ巨大地震 連続する「半割れ」とは?」
南海トラフ地震は半割れと全割れのどっちが怖い?
内閣府が試算した被害想定によると、半割れよりも全割れの方が死者数は多くなります(※8)。半割れのケースでは、先発地震が発生してから後発地震発生までの時間を最大限活用して、適切な対策をとることが重要です。
※8参考:内閣府「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書 概要」
南海トラフの半割れは東西のどっちが先ですか?
過去に発生した南海トラフ地震では、東側の半割れが起きた後に、西側の半割れが起きるケースがほとんどです。ただし、必ずしも東側から先に地震が起きるとは言い切れず、全割れのケースもあるため、被害想定区域にお住まいの方は万全な対策が必要です。
まとめ

本記事では、南海トラフ地震の半割れケースについて解説してきました。
半割れとは、東側の震源域と西側の震源域が時間差でずれて二度の地震が発生するケースです。過去に発生した南海トラフ地震のほとんどが、半割れのケースに該当します。
南海トラフ地震の半割れケースでは、道路・空港などの損壊や後発地震に備えた渋滞によって物流機能が停止するため、防災グッズの備蓄が欠かせません。
EcoFlowでは、送電設備が損傷した際に発生する大規模な停電に備えたポータブル電源を販売しています。自宅や避難所で電気のある生活を継続したい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。