電気自動車やポータブル電源などに採用されている蓄電池(バッテリー)の一種に、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーがあります。従来のリチウムイオン電池に比べて発火リスクが低く、寿命も長いため、普段使いに最適なバッテリーと言えるでしょう。
そこで本記事では、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとは何かについて解説します。リチウムイオン電池のメリット・デメリットや、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー製品の選び方も掲載しているので、用途に合った蓄電池を選びたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとは
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リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとは、繰り返し使える蓄電池(バッテリー)の一種です。大容量化と小型化を両立できるリチウムイオン電池に属しています。
正極にはリン酸鉄 (LiFePO4)、負極にはグラファイト(黒鉛)を使用し、複数セルからバッテリー形成を行っているのが特徴です。原材料費が安いので、安価で製造できます。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー以外の種類と比較
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住宅用蓄電池として最も多く使用されているのが、リチウムイオン電池です。他の蓄電池と比較して、安全面・サイズ・寿命のバランスに優れています。リチウムイオン電池には、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの他にも、主に以下の種類があります。
- 三元系リチウムバッテリー
- チタン酸系リチウムイオンバッテリー
それぞれの特徴をリン酸鉄リチウムイオンバッテリーと比較してみましょう。
三元系リチウムバッテリー
三元系リチウムイオンバッテリーとは、正極にNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)やNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)などの三元系化合物を使った蓄電池です。主に医療機器や電動自動車に使用されています。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーに比べてエネルギー密度が高いので、出力は安定しています。ただし、充放電サイクルは800回と少なく、寿命の短さが課題です。
チタン酸系リチウムイオンバッテリー
チタン酸系リチウムイオンバッテリーとは、負極にチタン酸リチウムを使った蓄電池です。主にモバイル医療機器や大規模蓄電システムに使用されています。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーと同様に、安全性・急速充電・長寿命を兼ね備えているのが特徴です。ただし、製造コストが高く、湿度管理要件が高いために、他のリチウムイオン電池と比べて実用化は進んでいません。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのメリット3選
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リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオン電池の中で最も安全性の高いバッテリーです。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーには、以下のメリットがあります。
- メリット1|発火するリスクが低い
- メリット2|自己放電率が低い
- メリット3|寿命が長い
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
メリット1|発火するリスクが低い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、他のバッテリーと比べて発火や爆発を起こしにくく、安全に使用できます。正極のリン酸鉄は内部抵抗が低く、充放電効率が良いので、充放電中に発熱がほとんど起きません。
また、正極の分子間で結合が強いため、酸素は離脱しないのが特徴です。万が一、内部でショートして高温環境に晒されても、燃焼材料になる酸素がないので、発火や爆発につながりません。ショートした部分は焼き焦げますが、連鎖反応が起きないのです。
メリット2|自己放電率が低い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーには、自己放電率が低いというメリットもあります。自己放電率とは、溜められている電力が時間の経過とともに減少していく割合です。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの自己放電率は1か月あたり1%なので、長期間保管していても十分な電力を確保できます。そのため、災害に備えた停電対策にも最適です。
メリット3|寿命が長い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、10年以上の長寿命を誇ります。蓄電池の寿命を左右する要素は、充放電サイクルです。充放電サイクルは、蓄電池を電池残量が0%から100%まで充電し、再び0%になるまでを1サイクルとして表します。
蓄電池の種類ごとに充電放電サイクルと寿命を見ていきましょう。
蓄電池の種類 | 充放電サイクル | 寿命 |
鉛蓄電池 | 300〜500回 | 1~2年 |
三元系リチウムバッテリー | 700~1000回 | 2~3年 |
リチウムイオン電池 | 2000〜5000回 | 10年以上 |
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリット2選
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高い安全性と長寿命を誇るリン酸鉄リチウムイオンバッテリーですが、以下のデメリットも存在します。コンパクトなバッテリーや寒冷地で使うバッテリーを探している方には、不向きである可能性があるので注意してください。
- デメリット1|エネルギー密度が低い
- デメリット2|低温環境に弱い
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
デメリット1|エネルギー密度が低い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、他のバッテリーに比べてエネルギー密度が低いため、製品の体積が大きくなる傾向にあります。体積が大きくなると重量も重くなるため、屋外への持ち運びには適しません。
ただし、現在は体積当たりの電池量を多くする「モジュールレス化技術」の開発が進められているので、エネルギー効率の低さをカバーできる日もそう遠くはないでしょう。
デメリット2|低温環境に弱い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは低温耐性が低いので、寒冷地での使用には向いていません。寒さが電子の移動を妨げてしまうので、電流の流れが制限されてしまいます。
三元系リチウムイオンバッテリーは、-20°Cの環境で70%以上の電力を保てるのに対して、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーではわずか最大60%の電力しか保てません。零度以下で保存・使用する機会が多い場合は、他のバッテリーを選んだ方がよいでしょう。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの充電方法3選
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家庭用蓄電池として活躍するリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの性能を最大限発揮するためには、用途に応じた充電方法を採用する必要があります。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの主な充電方法は、以下のとおりです。
- 家庭用コンセント
- 自動車のシガーソケット
- ソーラーパネル
それぞれの充電方法について、詳しく見ていきましょう。
家庭用コンセント
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの充電方法として最も主流なのが、家庭用コンセント(AC電源)から充電する方法です。家庭用蓄電池の製品によっては、大容量1,000Whクラスのバッテリーを1時間以内で満充電できるタイプも存在します。
電力会社からコンセントに供給される電流は交流なので、充電する際にインバーターは必要ありません。インバーターとは、直流を電化製品で使える交流に変換する機器です。
自動車のシガーソケット
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、自動車の走行中もシガーソケットから充電できます。コンセントよりは充電に時間がかかりますが、外出先でも充電できるのは大きなメリットです。シガーソケットの電流は直流なので、インバーターが必要になる製品もあります。
ソーラーパネル
太陽が昇っている日中帯であれば、ソーラーパネルからもリン酸鉄リチウムイオンバッテリーに充電できます。ソーラーパネルとは、太陽光から電気を生み出すパネルです。
アウトドアやオフィスなど、場所を選ばずに充電が行えるようになります。ソーラーパネルで発電した電気は無料なので、電力会社から購入する電気代を削減できる点も魅力です。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー製品の選び方3選
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高い安全性を誇るリン酸鉄リチウムイオンバッテリーですが、製品ごとに性能や特徴には違いがあります。選び方を誤ると、思わぬ事故にもつながりかねません。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー製品の選び方は、以下のとおりです。
- BMS管理システムが搭載されている
- 複数の充電方法に対応している
- 第三者機関の安全認証を受けている
それぞれの選び方について、詳しく見ていきましょう。
BMS管理システムが搭載されている
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを安全かつ効率的に利用するには、BMS管理システムが搭載されているかが重要です。BMS管理システムとは、バッテリーの電圧・電流・温度を常に監視し、安全な状態を維持するシステムを指します。
BMS管理システムが持つ主な機能は、以下のとおりです。
- 過充電保護
- 過放電保護
- 過電流保護
- 短絡保護
- セルバランス機能
- 温度保護
BMS管理システムの働きによって、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用した製品は安全性を担保でき、寿命を縮めることなく長持ちします。
複数の充電方法に対応している
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用した製品を防災やアウトドア、車中泊などの多用途で使用する場合は、複数の充電方法に対応しているタイプを選びましょう。
家庭用コンセントでの充電はもちろん、シガーソケットやソーラーパネルに対応しているモデルなら、屋外でも安定して電源を確保できます。災害によってコンセントが使えない状況でも、ソーラー充電ができれば電気供給を継続できます。
第三者機関の安全認証を受けている
いくら安全性を謳っている製品でも、第三者からの評価がなければ、安易には信用できません。安全性を担保するために、以下のような第三者機関からの安全認証を取得している製品を選びましょう。
安全認証の種類 | 取得条件 |
防災製品等推奨品認証 | 災害時に有効に活用でき、安全と認められる |
PSEマーク | 電気用品安全法の基準を満たしている |
フェーズフリー認証 | 日常時と非常時で価値を持つ |
リン酸鉄リチウム搭載のポータブル電源とは
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リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの代表的な活用例として、ポータブル電源が挙げられます。ポータブル電源とは、内部のバッテリーに大量の電気を蓄え、コンセントがない場所でも電化製品に給電できる機器を指します。
ポータブル電源には、三元系リチウムバッテリーも採用されますが、安全性や長寿命という観点では圧倒的にリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの方が優れています。家庭でポータブル電源が活躍する場面は、以下のとおりです。
- 停電時に冷暖房機器や調理家電、スマホなどに給電できる
- アウトドアで電化製品を駆使して快適に過ごせる
- 屋外でのリモートワークで、パソコンやスマホを常にフル充電にしておける
- 屋外で電動工具を稼働して、効率的にDIY作業が行える
- 電気料金が安い時間帯に蓄電した電気を、通常料金の時間帯に使う
- ソーラーパネルから蓄電した電気で節電生活を送る
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載したポータブル電源は10年以上も活躍します。
家庭用におすすめのポータブル電源3選
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家庭で使用するポータブル電源には、用途に合った出力と容量が必要です。例えば、防災対策として導入するポータブル電源を使い、以下の電化製品を動かすケースを想定します。
- 電子レンジ(800W):1時間
- エアコン(600W):3時間
- テレビ(60W):3時間
- 炊飯器(350W):1時間
電化製品を全て同時に動かすためには、出力1810W・容量3130Wh以上のポータブル電源が必要です。使用している電化製品の消費電力・消費電力量がポータブル電源の出力・容量を上回った場合には、正常に動作しません。
EcoFlowは、用途別に幅広い出力・容量バリエーションのポータブル電源を展開しています。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用しているので、低い自己放電率で10年以上の寿命を誇ります。家庭用におすすめの機種は、以下のとおりです。
- RIVER 3 Max
- DELTA 3 Plus
- DELTA Pro 3
それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
RIVER 3 Max
最大900Wの出力と572Whの容量を持つポータブル電源。エクストラバッテリーをワイヤレス接続すれば、用途に応じて手軽に容量を拡張できます。業界初となるGaNテクノロジーを搭載しており、電化製品の稼働時間は最大2倍に延長されます。
冷却スペースを減らしてコンパクト設計を実現しているので、屋外に持ち出す際にも邪魔になりません。ACコンセントからは、わずか1時間で満充電が可能です。ポータブル電源を気軽に持ち出し、幅広い用途で活用したい方にぴったりな機種と言えるでしょう。
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DELTA 3 Plus
最大2000Wの出力と1024Whの大容量を持つポータブル電源。AC・DC・シガーソケット・USBを含む13個の出力ポートを搭載しています。大容量を備えながら重量12.5kgの軽量コンパクト設計なので、持ち運びや収納にも便利です。
ACコンセントからわずか最短56分と、業界最速クラスの充電速度を誇ります。災害情報を検知したら自動で優先的に充電を行う荒天警報機能が付いているので、ポータブル電源の充電を忘れていても安心です。3人家族以下の災害対策や節電対策として大活躍します。
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DELTA Pro 3
最大3600Wの出力と4096Whの超大容量を持つポータブル電源。エクストラバッテリーを追加すれば、最大24kWhまで容量を拡張できます。並列接続によって、出力も最大7200Wまで拡張が可能です。握りやすいハンドルを備えており、家中を自由に持ち運べます。
ACコンセントからは80%までをわずか2時間30分、最大2600WのデュアルPV充電では100%までを最速2時間10分で充電できます。最大90%の節電効果を得たい方や、3日以上の停電対策を万全にしたい方におすすめです。
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リン酸鉄リチウムイオンバッテリーに関するよくある質問
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最後に、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーに関するよくある質問を紹介します。
- リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用する製品は?
- リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは車で走行充電器として使える?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用する製品は?
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、電動自転車やポータブル電源、電動工具、電気自動車などに採用されています。特に、人が操縦する電動自転車や電気自動車には高い安全性と長寿命が求められるため、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーが最適です。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは自己放電率が低いために、エネルギー貯蔵システムにも役立ちます。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは車で走行充電器として使える?
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用するポータブル電源は、車内で走行充電器として活躍します。移動中にバッテリーを充電できるので、屋外でコンセントを探す手間がかかりません。ただし、製品によってはインバーターが別途必要になります。
まとめ
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本記事では、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーについて解説してきました。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとは、正極にリン酸鉄 (LiFePO4)を使った蓄電池の一種です。他のリチウムイオン電池と比べて、安全性・寿命・自己放電率に優れています。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用した製品の中では、携帯性に優れたポータブル電源がおすすめです。防災やアウトドア、仕事など幅広い用途で大活躍します。
EcoFlowでは、幅広い出力・容量バリエーションの製品を販売しています。場所を選ばず電気を持ち運びたい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。