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災害時の車中泊のコツ

合言葉は、「ばすだしで」と「ファーストクラス」

車中泊が人気ですね!防災の講演をしていても、車中泊のリクエストが増えています。ふだんから車中泊ができると、災害時にも役立ちます。でも、災害時には、特に注意しなければいけないことがあります。  災害時の車中泊の注意ポイントを「ばすだしで」という合言葉にしています。(*1) 順番に説明していきますね。

 *1 合言葉にしてくれたのは、香川大学IECMS地域強靭化研究センター准教授 磯打千雅子氏

1.「ばすだしで」=「ば」場所に注意!

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出典 内閣府 防災情報のページ 新たな避難情報に関するポスター・チラシ裏面

コロナ禍の災害で避難する場合は、避難所や避難場所に行くことだけが避難ではありません。条件がクリアできれば自宅、ホテルや親戚宅でも、難を避ける「避難」です。では、車中泊はどうでしょうか?上記、内閣府のポスターの、最下部を見てください。「豪雨時の屋外への移動は車も含めて危険です。やむをえず車中泊する場合は、浸水しないよう周囲の状況等を十分に注意してください。」という一文があります。

車中泊を禁じているわけではありません。けれども「やむをえず」という言葉が入っている事や、欄外に書かれていることから、災害時の車中泊は、微妙な取り扱いになっているにお気づきでしょうか? この背景には、移動中に車中死のリスクがあることや災害関連死とされた方の多くが車中泊をされていたことから、公的機関が無条件で車中泊を推奨しにくいという事情があります。 ここで、ポスターに「豪雨時の屋外への移動は車も含めて危険です。」とあるのは、移動中の車中死への注意喚起です。2019年の台風19号21号では、犠牲になった人のうちの3割が車中死(*2)でした。 1時間雨量が30mmになると道路は川のよう(*3)になります。

*2 毎日新聞 2019/11/12 東京朝刊
*3 気象庁 雨の強さと降り方
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出典 江戸川みんなの防災プロジェクト 執筆あんどうりす イラスト エムラヤスコ

多くのクルマはタイヤの半分を超える浸水で、(早いクルマは、タイヤの3分の1でも)、エンジンが止まる可能性(*4)が出てきますし、アンダーパス(*5)での車中死もあります。歩いて危険な状況ではクルマでも危険になります。 災害時、クルマで移動する場合は、明るい昼間のうちに、そして雨がひどくなる前に避難することが重要です。

次に、ポスターの「浸水しないよう周囲の状況等を十分に注意してください。」という部分にも注目します。浸水する場所は、避けます。高潮で海水に浸かってしまったことで、停車中や走行途中にクルマが炎上した事故(*6)もありました。ただ、高台に行くと、土砂災害のリスクもあります。災害時、車中泊する場所選びには、ハザードマップの確認が重要になります。

ちなみに、公的機関は積極的に車中泊を推しているとまでは言いきれないものの、コロナ禍で密を避けたい需要は大きいです。現在は、一定の条件のもとで災害時の車中泊が可能となる体制を整えている自治体が出てきています。 クルマで避難できる場所をマップで公開していたり、ショッピングモールやパチンコ店などと事前に提携して、車で避難できる場所を確保している場合があります。ご自身の自治体情報を調べてみてください。災害時の車中泊に場所選びは重要です。

*4 JAF 台風・大雨時のクルマに関する注意点(深さだけでなく、走行速度も関係してきます)
*5 JAF 台風・大雨時のクルマに関する注意点
*6 あんどうりす Yahoo記事 高潮被害でクルマが炎上します。クルマは高台へ避難を
     https://news.yahoo.co.jp/byline/andorisu/20200905-00196842

2.「ばすだしで」=「す」水平を確保!エコノミークラス症候群対策

熊本地震では、災害関連死とされた方のうちの24%が車中泊をされていました。(*7)そのうち、エコノミークラス症候群が原因で亡くなった方もいました。厚生労働省は、「避難生活を過ごされる方々の深部静脈血栓症/肺塞栓症 (いわゆるエコノミークラス症候群)の予防について 」で下記のように述べています。”特に、食事や水分を十分にとらない状態で車などの狭い座席に長時間座っているなどして、足を動かさないと、血行不良が起こり、いわゆるエコノミークラス症候群が発症するリスクが高まるおそれがあります。”

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 *7  熊本市 2017年4月13日調査結果

ここで、災害時の車中泊のイメージと、最近、人気の車中泊の違いを知ってください。 災害時は、車内が避難道具やペットや人で、窮屈になっているかもしれません。座ったまま寝たという人もいます。そのため、エコノミークラス症候群が起きやすい条件が揃います。 人気の車中泊に近づけるために、意識してほしいのが、「ファーストクラス」です。家で寝るのと全く変わらない状況が作り出せるのであれば、エコノミークラス症候群となる可能性を減らせます。そして、ファーストクラスのために大事なことは、いかに水平(フラット)にできるかということです。  車内を水平にできるかどうかは、車種によって違います。

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少し、凹凸があっても、エアマットを使ったり、凹凸に毛布やエアクッション、ダンボールなど詰め物をして、水平に近づけます。どうしても、水平にならない場合は、自作の木枠ベッドを作成する方もいます。

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3.「ばすだしで」=「だ」 断熱アウトドアテクを知る。暑さ寒さと一酸化炭素中毒対策に

クルマは熱しやすく冷めやすい熱伝導率のいい鉄とガラスでできています。外気温の影響を受けやすいのです。そのため、テントで寝るより寒くて暑いということもあります。しかし、災害時、エアコンは、燃料節約およびアイドリングによる一酸化炭素中毒を防ぐために切ります。積雪時は、マフラー部分に雪の壁ができることにより、排気が車内に入りこむことがあります。晴れでも、駐車場所の地形や他のクルマのアイドリングにより一酸化炭素中毒の危険がありえます。その時、知っておいてほしいのが断熱のテクです。カーテンは目隠しのために役立ちますが、窓との隙間が空き、そこから冷気が伝わります。災害時の寒さ対策には、ダンボールやエアクッション、銀マットやヨガマットなどの断熱素材を使って窓、ドア、床からの冷気を遮るのが効果的です。

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エアマットも、断熱性の高い「動かない空気層」が作れるので断熱材になります。 夏の日中は、車内にいられないほど暑くなるので、フロントガラスなどを断熱して車内の温度があがりすぎないようにします。夜は、断熱の必要はなく、むしろ、窓を開け網戸をとりつけ風を通す事を心がけます。夏対策は、「で」の電気でも説明します。

4.「ばすだしで」=「し」収納でエコノミークラス症候群と紛失対策

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荷物が寝る場所を占領すると無理な姿勢で寝てしまいがちです。それがエコノミークラス症候群にもつながります。

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テントを併用したり、クルマの横や後ろに取り付けられるカーサイドテントを活用すると寝る場所を確保しやすいです。 また、貴重品を紛失しないように小物の収納場所も定位置があると安心です。車中泊の経験を積む事でマイカーにあった上手な収納ができるようになってきます。

5.「ばすだしで」=「で」 ファーストクラス車中泊にはポタ電を

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最後の「で」は電気です。電気が使えると、災害時でも日常に近い生活ができます。HVやPHV、EV車は、クルマから概ね1500W給電できます。それ以外のクルマでも、ポータブル電源を利用することで、パソコン、スマートフォンの充電に加えて、家電への給電が可能になります。 2018年の胆振東部地震ではブラックアウトによる停電が、2019年房総半島台風では、停電の長期化が問題になりました。スマートフォンの充電ができないだけで、支援物資の情報も受け取りにくくなります。巨大地震ではなくても、豪雨や土砂災害が頻繁に起こるようになった昨今、電気の備えは重要になってきています。

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でも、災害専用のものを準備するのも気が重いですよね。まずは、「ばすだしで」を意識して、気軽に車中泊に取り組んでみるのはいかがでしょうか?ポータブル電源を利用した車中泊では、炊飯器や電気ケトル、機種によっては、電子レンジまで利用できるので、キャンプのハードルも下がります。好きな場所で仕事をすることもできます。

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また、ポータブル電源を災害用に購入した方も、そのまま放置するとバッテリーが劣化してしまうので、少なくても3か月に1回は利用することが必要になってきます。ポータブル電源への充電も、クルマのシガーソケットや太陽光パネルからの充電に慣れておくと災害時、停電した時の利用がスムーズになります。

詳しくは9月10日公開予定のマンガ第三話をご覧ください。

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ふだんできないことは災害時にできないと言われています。ポータブル電源を日常利用している人は「ポタ電」と呼んで「やってみた」を日常的に共有したりしています。アウトドアというと、不便を我慢して耐えるというイメージもあるかもしれませんが、以前からリュックにソーラーパネル取り付けてみるなど、自家発電好きの人は多い印象です。「ポタ電」利用だと、楽しく気軽なファーストクラス車中泊を目指しやすいので、災害前にこそ体験しておいていただければと思います。

※ポータブル電源で災害に備える「お役立ちエコフロー」EcoFlow防災特集が公開中!

詳しい情報はこちら
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