近年のキャンプブームを受け、アウトドア用品メーカーやホームセンターからは、これまで以上に数多くのキャンプ用品が販売されています。
不便の多いアウトドアシーンを快適にするキャンプ用品は、災害時に役立つ防災グッズにも兼用できるとして注目を集めています。
この記事では、災害時にキャンプ用品が役立つシーンや、具体的にどういったキャンプ用品が防災グッズとしておすすめなのかなどを紹介していきます。
全国各地で開催「防災キャンプ」が注目を集める理由
地震大国である日本では、数多くの大地震に見舞われています。近年でも東日本大震災や熊本地震など、大きな地震で甚大な被害を受けた地域がありました。また、地震だけでなく、豪雨や台風といった災害も発生し、いつ・どこで・誰が被災してもおかしくない状況です。
そんななか、キャンプを通して災害時の不便さを体験し、防災に役立つ知識やスキルを身につけられる「防災のためのキャンプ」が全国各地で開催されています。
防災のためのキャンプでは、避難所への宿泊やゲームによる防災学習など、実際の体験を通じて防災を学べます。また、災害時の不便さを体感することによって、どんなものが防災に必要なのかを考えたり、備えの大切さを理解したりもできます。
防災キャンプでは単に「見る」「聞く」だけでは得られない経験を得られるとして、親子で参加をする方や、市区町村の取り組みとして実施する地域が増えています。
災害時、避難してみて分かる「なくて不便」なこと
普段とはまったく異なる環境である災害時には、不便なことがたくさんあります。しかし、実際に大きな災害に遭ったり避難をしたりした経験がなく、あまりイメージがつかないという方もいるでしょう。
そこでここでは、災害時に感じる不便なポイントを具体的に解説していきます。
電気が使えなくて不便!
普段は当たり前にある「電気」ですが、災害時には停電して電気が使えなくなってしまうケースが多いです。
電気が使えなければ、照明が点かなくなるのはもちろん、冷暖房器具が使えなかったりスマホやPCの充電ができなくなったりもします。
特に、スマホやPCは非常に大切な連絡ツールかつ情報源です。スマホやPCの充電が切れてしまえば、家族と連絡を取ることや、災害や避難に関する情報を入手することが難しくなってしまいます。
太陽の光がなくて不便!
普段であれば、陽が落ちてからも照明を使って問題なく生活ができます。しかし、照明が使えない災害時には、陽が落ちると真っ暗になってしまいます。
手元が見えずに細かい作業ができないだけでなく、周囲にどのような危険があるのかわからず、身動き一つ取れない状況になります。また、危険が迫ってもすぐに気付くことができないため、防犯面でのリスクが高くなるでしょう。
さらに、冬場は陽が落ちると気温がグッと冷え込みます。電気が使えず防寒対策が取りづらいなかで、太陽の光の大切さを痛感する方が多いです。
ガスが使えなくて不便!
「災害時にはガスが使えないことを想定して、火を使わなくても食べられる食事を用意しておけば問題ないだろう」と考える方は少なくありません。しかし実は、ガスが必要となるのは火を使うシーンだけではありません。
お湯を沸かすのにもガスが必要なため、ガスが使えなければ温かいシャワーを浴びたり、お湯で食器を洗ったりすることもできません。ガス暖房を使用している場合は、暖房で部屋を暖めることもできなくなってしまいます。
また、火を使わなくても食べられる食事を用意していても、冷たい食事が続くととストレスを感じる人も多くなるでしょう
水が使えなくて不便!
災害で断水してしまうと、手や身体が洗えなくなるのはもちろん、トイレを流すことや飲料水の確保さえも難しくなります。
人が生きるためには、成人一日あたり約2.5Lの水が必要です。必要な水分が取れないと脱水症状に陥り、場合によっては命の危険もあります。
また、人一人が不便を感じない生活をするためには、一日あたり30Lの水が必要と考えられています。災害時に飲料用の水は確保できている状況でも、手や身体を洗ったりトイレを流したりするための水は不足する可能性が高いです。
災害時は水不足により手や身体が十分に洗えないこと、使用したトイレを流せないことなどで、心や身体に強いストレスが溜まってしまいがちです。
食べ物がなくて不便!
食べ物が不足している状態や偏った食事が続くと、栄養状態が悪くなり、体調を崩してしまいます。
また、必要最低限の栄養は採れていても、食事の楽しみがないことや満腹になるまで食べられないことで、精神的な負担が大きくなってしまいます。
ただ、最近では、火や水がなくとも食べられる保存食のバリエーションが増えています。万が一に備えて、自分が「おいしい」と思える保存食を普段から常備しておくと、災害時の不安やストレスも少なくできるでしょう。
寒くて(暑くて)不便!
真冬や真夏に災害が起きた場合、冷暖房器具が使えない状況で寒さや暑さを乗り切るのは、体力的にも精神的にも非常に大変です。
特に、集団生活が続く避難所では感染症も流行りやすいため、なるべく体力を温存して体調を整えることが大切になります。
防災用品を揃える際には、厳しい寒さや暑さを乗り越えなければならない可能性も考慮した衣服や寒さ・暑さ対策グッズを揃えておくと安心です。
トイレがなくて不便!
断水によりトイレが使えないことや、避難所で使えるトイレの数が限られていることで、十分にトイレが使えない不便さを感じるシーンも多いです。
また、トイレが流せなかったり不特定多数の人が使用していたりすると、トイレが不衛生になりやすいです。トイレに細菌が繁殖して感染症の原因になるケースや、害虫の発生につながるケースもあります。
携帯用トイレや簡易トイレの備えがあると、災害時に起こりうる「トイレがない不便さ」や「不潔なトイレを使わなければならないストレス」を緩和できるでしょう。
プライベートスペースがなくて不便!
避難所生活を送らなければならない場合、避難所でプライベートスペースが確保できないことが大きなストレスの原因になります。
一人で過ごせる空間がないと、ストレスを感じるだけでなく、就寝時に人の気配を感じて寝付けなかったり、人の目が気になって着替えができなかったりといった不便さもあります。
また、他人との境界線がないことは防犯の面でも大きなリスクとなってしまいます。
治安が悪くなって不便!
災害時は、日常生活では守られている秩序が乱れて治安が悪くなり、犯罪が多くなります。
実際、警視庁の震災後の被災地における犯罪情勢を見ると、災害の混乱に乗じた燃料や自動車の盗難、民家や店舗での窃盗などが起こっていることがわかっています。また、避難所で持ち物が盗まれたり性犯罪の被害にあった方もいます。
災害時には、自分や家族の身を守るための工夫や防犯グッズも用意しておく方がいいでしょう。
キャンプをしているとどんなことで防災に役立つの?
災害時の「不便なこと」の多くは、アウトドアシーンで感じる「不便なこと」とよく似ています。そのため、普段からキャンプをしていると、災害時に役立つスキルが身につきますよ。
ここでは、キャンプをしているとどのように防災に役立つのかをご紹介していきます。
キャンプ用品を使うことで不便が解消できる
アウトドアシーンの不便を解消するために作られたキャンプ用品は、災害時の不便を解消するのにもうってつけです。
テント・椅子・寝袋といった快適な住環境作りに最適なものから、ガスや電気がなくとも使える調理用品、寒さ・暑さから身を守るためのグッズまで、さまざまなキャンプ用品が災害時に活躍するでしょう。
サバイバルスキルが身に付く
キャンプを通してサバイバルスキルが身につくことで、災害時でも上手に立ち回れるようになります。
たとえば、火を起こす・寒さや暑さをしのぐ・衛生環境を整えるなど、普段の生活ではライフラインに頼ればすぐにできることも、使えるライフラインが限られる災害時には、思うようにできません。
キャンプでは災害時と同じようにライフラインが限られたなかで活動をするため、キャンプで身につけたサバイバルスキルは災害時にも役立ちます。
キャンプ用品をスムーズに使いこなせる
たくさんのキャンプ用品を持っていても、キャンプ用品を使いこなせなければ、災害時の不便を解消することはできません。普段からキャンプでキャンプ用品を使うことに慣れておくと、災害時もスムーズに使いこなせるでしょう。
特に、災害時にはさまざまな混乱が生じています。そんななか、速やかにテントの設営ができたり調理器具を使っておいしいご飯を作れたりすることで、より快適かつ気持ちに余裕を持って過ごせるようになるはずです。
非常時でも気持ちに余裕が持てる
普段の快適な生活から突然不便な生活に陥ると、大きなストレスを感じるものです。しかし、日頃からキャンプで不便な状況に慣れておけば、災害で不便な状況に陥ったとしても、パニックにならず落ち着いて行動ができるようにもなります。
ただでさえ不安な災害時、気持ちに余裕がなくなると、思わぬトラブルが起きやすくなったり、精神的にストレスを感じやすくなったりしてしまいます。
気持ちに余裕が持てれば、不便ななかでも、工夫をしながら快適に過ごせるようになるはずです。
災害時に役立つ!備えておくと安心なキャンプ用品
ここでは、備えておくと安心なキャンプ用品を紹介していきます。
防災グッズとしてキャンプ用品を揃えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
ランタン・ヘッドライト
ランタンやヘッドライトは、電気が使えない災害時において貴重な光源になります。ランタンやヘッドライトがあることで、暗くなってからも作業ができたり安全性が確保できたりします。
ランタンはテント内やテーブルの周辺など広い範囲を照らすことに、ヘッドライトは細かい作業をする際や移動の際に手元や足元を照らすのに役立ちます。どちらも備えておくと、より快適に過ごせるようになりますよ。
最近では、100円均一でもランタンやヘッドライトが販売されていますので、ぜひチェックしてみましょう。
ガスコンロ・ガスバーナー
ガスが使えない災害時でも、ガスコンロやガスバーナーがあれば温かい食事をとることができます。
収納時には手の平サイズになるコンパクトなガスコンロやガスバーナーもあるため、もしものときのために用意しておくのがおすすめです。
ただし、ガスコンロやガスバーナーを使う際には当然ガスボンベが必要になります。ガスコンロやガスバーナーを用意する際には、ガスボンベもセットで備えるようにしてくださいね。
寝袋・マット
寝袋やマットは、快適な睡眠に導いてくれる優秀なアイテムです。
特に、マットがあるだけで睡眠時の快適度は段違いにアップします。地面の硬さを感じないので身体が痛くなりにくいほか、地面からの熱気や冷気を遮断してくれるため、寒さや暑さも感じづらくなりますよ。
なかでも、エアーマットは使わないときにはかなりコンパクトになるので、収納が限られているような家庭にもおすすめです。
テント・ポップアップテント・タープ
テントがあれば、災害時でもプライベートな空間を確保できます。さらに、雨や直射日光から身を守れるようにもなるため、より快適に過ごすことができます。
「ポップアップテント」と呼ばれるテントは、広げるだけでテントの設営が完了する簡易テントのことです。たためば小さく収納できますし、力が弱い方や設営に手間取りたくない方におすすめです。
また、タープは日除けに使うイメージを持っている方も多いですが、実は、張り方次第でテントのように使うこともできます。張り方のテクニックを身につける必要はありますが、なるべくコンパクトかつ軽量に済ませたいのであればタープがおすすめです。
衣類・動きやすい靴
アウトドア向きの衣類や靴は、身体を動かしやすく、安全性も高いです。
「ポケットが多くて収納力が高い」「水を弾くので突然の雨でも濡れず、汚れもつきづらい」など、動きやすさや安全性以外のメリットも多いため、防災グッズのひとつとして備えておくといいでしょう。
また、衣類を用意する際には「レイヤリング」を意識するのが大切です。レイヤリングでは、衣類をベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤーの3つの層に分けてコーディネートをします。
レイヤリングを取り入れることで暑さや寒さに対応しやすい服装作りができるようになるため、ぜひ取り入れてみてくださいね。
アウトドアワゴン
キャンプなどでたくさんの荷物を運ぶ時に使うアウトドアワゴンがあると、避難所へ移動するときなど、多くの荷物の運搬をするシーンで非常に役立つでしょう。
また、使わない荷物はアウトドアワゴンのなかにまとめて置いておける点や、アウトドアワゴンを収納する際には小さく折りたたんでおける点も便利なポイントです。
収納スペースに余裕がある場合には、防災グッズをすべてアウトドアワゴンのなかに入れておいて、アウトドアワゴンを防災バッグ代わりにしておくと、災害時にスムーズに避難ができますよ。
ウォータータンク
災害時には使える水が限られており、場合によっては飲み水の確保さえも難しくなる点が大きな課題です。そんなとき、ウォータータンクがあれば、水の確保がしやすくなります。
ウォータータンクに水を確保してから避難ができるだけでなく、避難所で給水車が来たときには水の持ち運びに役立ちます。
また、断水していない場合でも、自分の避難スペースに水をおいておけるので、水が必要になるたびに移動をする必要がなくなり、非常に便利です。
モバイルバッテリー・発電機
モバイルバッテリーやポータブル電源、発電機があれば、スマホやランタンの充電ができるようになります。特に、ポータブル電源は室内でも使用でき、持ち運びしやすいサイズなのにスマホや照明器具以外にも様々な電化製品を動かすことができ、災害による停電時にも大活躍してくれます。
出力できる電力はポータブル電源によって異なりますが、だいたいのポータブル電源では電気毛布やサーキュレーターのように電力消費が多くない電化製品の使用が可能です。
高出力なポータブル電源や発電機であれば、電気ケトル・炊飯器・ドライヤー・冷蔵庫のように、多くの電力を必要とする電化製品も使えますよ。
また、ポータブル電源は「溜めておいた電気を使えるもの」ですが、発電機は「新たに電気を生み出すもの」であり、自家発電が可能となります。発電機も一緒に備えておくと、もしものときにも活躍してくれるでしょう。
EcoFlowのDELTA Max 1600は、最大で5,644Whまで拡張できる大容量のポータブル電源です。
定格出力は2,000Wとパワフルな出力が可能なうえ、同時に15台ものデバイスを稼働できるため、家庭の電力のほとんどをまかなえるようになります。
また、ソーラーチャージャーと接続すればソーラー充電も可能。溜めておいた電池が底をついた時も新たに蓄電でき、キャンプや災害時における「電気がない不便さ」を解消できますよ。
・製品名:DELTA Max1600デルタマックス
・価格:187,000円(税込)
・サイズ:49.7×24.2×30.5cm
・重量:約22㎏
・容量:1,612Wh, 50.4V
・出力:2,000W(X-Boost機能使用時は2,400W)
EcoFlowのスマート発電機は、EcoFlowのDELTA ProまたはDELTA Maxとつなげて使える発電機です。
接続しているポータブル電源の電力が指定の割合を下回ると、自動でガソリン発電を開始します。4Lのガソリンで5,400Whもの発電が可能であるため、アウトドアシーンで活躍するのはもちろんのこと、災害時の一時的な停電もしのげるようになるでしょう。
ガソリンの残量や一酸化炭素を検知して自動で停止する機能も備わっており、安心して使える発電機です。
・製品名:EcoFlowスマート発電機
・価格:159,500(税込)
・サイズ:59.7×29.6×47.5 cm
・重量:約29.3kg
・燃料タンク容量:4L
・出力:1800W
ソーラーパネルは太陽光から発電を行う装置です。ソーラーパネルがあれば、災害時のように停電していたり電力が限られていたりする状況でも、太陽の光さえあれば電化製品やポータブル電源などを充電できるようになります。
ソーラーパネルは、太陽光がないシーンでは発電が難しくなってしまうデメリットもあります。しかし、発電機よりもコンパクトであるうえに、ガソリンで発電する発電機のように燃料を補充する必要はない点が魅力です。
電化製品やポータブル電源と接続して使用するEcoFlow 110Wソーラーパネルは、単結晶シリコンで構成されており、発電効率がいいのが特徴です。
折りたたみ式のため、収納時にはコンパクトにしておけるうえに、太陽光充電を行う際には細かく角度を調節して太陽光の吸収効率をアップさせられます。
また、より多くの電力を必要とする際には複数枚をつなげて拡張することも可能で、シーンや使い手に合った使い方ができる柔軟性も魅力です。
まとめ
キャンプ用品やキャンプで身につくサバイバルスキルは防災にも非常に役立ちます。
普段はキャンプをより快適にするアイテムとして、万が一のときには防災グッズとして活用できるキャンプ用品はたくさんあります。今回の記事を参考に、ぜひ防災にも役立つキャンプ用品を揃えてみてくださいね。