国土の7割を占める森林は、国土の保全や地球温暖化の抑制、水源の確保など、重要な役割を担っています。ところが、ひとたび山火事が起きると延焼は急速に拡大し、貴重な資源を一瞬にして焼失させます。山火事が起きる原因の多くは、人間の不注意によるものです。
そこで本記事では、山火事が起きる原因や予防策について解説します。山火事発生時の適切な避難行動や消火活動の課題、自然環境の復旧に向けた取り組みも掲載しているので、山火事による被害から家族を守りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
山火事の原因と予防策に関する解説

山火事は、対応が遅れると貴重な森林を大量に焼失するだけでなく、家屋にも被害が広がります。山火事の出火原因として大半を占めるのが、人間の不注意によるものです。山火事を防ぐためには、一人一人の防火意識の向上が欠かせません。
山火事が発生する主な原因は、以下のとおりです。
- 原因1|焚き火
- 原因2|火入れ
- 原因3|放火
それぞれの原因と予防策について、詳しく見ていきましょう。
原因1|焚き火
消防庁によると、令和5年に起きた山火事1,299件のうち、焚き火が原因で起きた件数は416件と全体の32%を占めました(※1)。薪や枝を燃やして暖を取る焚き火は、キャンプや登山で主に行われるアウトドアアクティビティの一つです。
焚き火の設置場所や薪の量、扱い方などを誤ると、大規模な山火事につながりかねません。焚き火で山火事を予防するための対策は、以下のとおりです。
- 落ち葉や枯れ木の近くでは焚き火をしない
- 焚き火台のサイズ以上の薪を一度に投入しない
- 水場のある環境で焚き火をする
- 焚き火からは目を離さない
- 強風時は焚き火をしない
- 焚き火の後は完全に消火する
燃えやすい落ち葉や枯れ木がある場所では、焚き火の炎が直接触れなかったとしても、火の粉だけで発火する危険があります。焚き火台を置く場所は、すぐに鎮火ができるよう水場の近くにして、落ち葉や枯れ木を掃除しておきましょう。
※1参考:総務省消防庁「令和5年(1〜12月)における火災の状況(確定値)について」
原因2|火入れ
令和5年に発生した山火事のうち、火入れが原因の件数は全体の19%を占めます(※1)。火入れとは、森林に面する周囲1km以内の土地で、立木や雑草等を焼却する行為です。地ごしらえや開墾準備、害虫駆除などが目的で行われます。
火入れによる山火事を防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- 防火の設備を準備した上で火入れを行う
- 強風時や空気が乾燥している時は火入れを中止する
- 火入れは2ヘクタールを超えない区画ごとに風上から行う
- 火入れに着手した日の日没までに完了する
消防庁によると、山火事は空気が乾燥して強風が吹く3月、4月、2月に最も多く発生しています(※2)。火入れ作業中であっても、風勢によって延焼の恐れがある場合は、速やかに火入れを中止してください。万が一の出火時に備えて、防火設備の準備も欠かせません。
※2参考:総務省消防庁「令和6年版 消防白書」
原因3|放火
令和5年に発生した山火事のうち、放火が原因の件数は全体の4.9%を占めます(※1)。故意で火を放つ放火は、人命に関わる重大な犯罪です。犯罪者がいつ訪れるか分からないため、予防のしようがないと思われる方も多いでしょう。
しかし、放火の意識がなかったとしても、火遊びが「放火の疑い」と判断される場合もあります。特に14歳以上の者が火遊びによって山火事を起こした場合は、放火または無意識放火です。いかなる理由があっても、火遊びをしてはいけません。
山火事発生時の避難行動と事前対策3選

山火事の出火に関与していなかったとしても、近隣で山火事が起きると甚大な被害を受けるリスクがあります。事前に対策を講じていなければ、命を落とす事態にもなりかねません。山火事の発生に備えて家庭でできる事前の対策は、以下のとおりです。
- 対策1|適切な避難行動を把握する
- 対策2|非常用持ち出し袋を準備する
- 対策3|避難経路を確認しておく
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|適切な避難行動を把握する
山火事の多くは気付かないうちに発生し、急速に樹木や家屋に燃え移ります。山火事が発生すると時間的な有訴はほとんどないため、以下の避難行動を把握しておきましょう。
■山火事の炎や煙が見える場合
- 山火事を発見した時点で119番通報する
- 風下を避けて速やかに避難する
- 自力で避難できない場合は119番に連絡する
■山火事の炎や煙が見えない場合
- ラジオやテレビで防災情報を収集する
- 側溝を水で満たす
- 火が燃え移る可能性のあるものを濡らす
- 車を安全な場所に移動する
- 屋外用品を屋内に移動する
- 自治体から避難指示があった場合は速やかに避難する
避難時は濡れたタオルやハンカチを口にあてて、荷物は最小限にしてください。
対策2|非常用持ち出し袋を準備する
山火事の危険が迫っている状況で、必需品を探している時間はありません。避難指示が出たら迅速に避難できるよう、以下の中身が入った非常用持ち出し袋を準備しておきましょう。
- 飲料水
- 非常食
- 携帯ラジオ
- 防煙マスク
- 懐中電灯
- 衛生用品
- 現金
- 救急セット
- ポータブル電源
防災リュックは、日本防炎協会が認定した燃えにくいタイプがおすすめです。
対策3|避難経路を確認しておく
山火事発生時に危険なエリアへと避難しないよう、適切な避難経路を確認しておきましょう。火が来る方向は明確に分からないため、複数の経路を計画しておくことが重要です。過去に山火事が発生した際の林野火災マップを入手すれば、危険なエリアを予想できます。
避難ができずにその場で待機するケースを想定し、燃えやすいものがない安全なゾーンも把握しておきましょう。安全なゾーンとは、広いコンクリートの地面や手入れされた短い草、大量の水がある場所です。
消火活動の現状と課題

山火事は、消火活動が遅れると森林や家屋に甚大な被害をもたらします。火の粉が飛散して同時多発的に着火すると、急速なスピードで延焼し、消火活動が困難になるのです。
日本では、消防車やヘリコプターを活用して、地上と空中から消火活動を行います。日本で採用されている主な消火方法と直面している課題について、詳しく見ていきましょう。
山火事に対する消火活動の方法
日本の山火事に対する消火活動では、ヘリコプターを使った空中消火が行われます。空中消火とは、都道府県・消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや自衛隊ヘリコプターを用いて、上空から水や消火剤を撒く方法です。
空中消火は広範囲をカバーできる一方で、地表付近の火には大きな効果が得られません。また、池や川などの自然水利を利用できなければ、給水時間が長くなり非効率です。そこで、地上からは消防車を出動させることによって、上空と地上の両方から消火活動を行います。
山火事の消火活動が直面している課題
ヘリコプターと消防車による消火活動は、早期鎮火にしか向いていません。対応が遅れたり、強風に煽られたりして火の手が広がった状態では、十分な効果を発揮できないのです。また、燃えている場所が以下に該当する場合は、地上からの消火活動が困難を極めます。
- 消防車が進入できない
- ホースを伸ばしても届かない
- 人がすぐに入れない
上空から集中的に放水したとしても、火が消えたように見える場所から再び煙が上がってくる場合があります。完全に消火するためには、どうしても人海戦術が必要不可欠です。
ポルトガルやイタリア、スペインなどの山火事が多い国では、ヘリコプターではなく、消火機と呼ばれる専用の大型飛行機が用いられています。ヘリコプターよりも積載できる水の量が多いため、効率的に消火活動を行えるのが特徴です。
山火事による環境への影響と復旧への取り組み

ひとたび山火事が起きると、延焼は急速に拡大していき、自然環境や生態系に多大な影響を与えます。2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災では、発生から6日を迎える3月4日時点で、焼失面積がおよそ2600ヘクタールに拡大しています(※3)。
山火事による環境への影響や復旧への取り組みについて、詳しく見ていきましょう。
※3参考:NHK「大船渡 山林火災 焼失面積2600ヘクタールに拡大」
山火事が自然環境・生態系に与える影響
山火事によって森林が焼失すると、森林の機能が回復するまでに数十年もの歳月を要します。回復するまでの期間は、山の保水力が低下するため、土砂災害や洪水のリスクが高まるのです。山火事で出た木々の残骸や灰が雨で流されると、家屋に甚大な被害が及びます。
また、森林が燃えれば大量の二酸化炭素が放出されるので、地球温暖化は加速します。地球温暖化による気温の上昇や異常少雨、干ばつが起きれば、空気は乾燥しやすくなるのが特徴です。乾燥は発火しやすい環境を作り、山火事が起きるという悪循環を生み出します。
さらに、山火事は森林で生きている動植物を大幅に減少させます。2019年にオーストラリアで起きた大規模な山火事では、5,000体以上のコアラが焼死しました(※4)。山火事で生態系のバランスが崩れると、私たちの生活だけでなく、地球規模で影響を受けます。
※4参考:BBCニュース「ニューサウスウェールズ州のコアラ、2050年までに絶滅の恐れ」
復旧に向けた取り組みや支援活動
山火事が起こると、自治体や民間団体による被災地に向けた支援活動が行われます。支援活動の内容は、物資支援や医療支援、避難所の運営などです。支援を受けることで、避難者は少しでも安心して生活が送れるようになるでしょう。
山火事によって森林が焼失した地域では、復旧に向けた様々な取り組みが実施されます。被害木は造林や保育に影響を与えるため、最初に処理しなければなりません。森林の復旧では、苗木の植栽や下刈、除間伐などの取り組みが行われます。
2004年に香川県直島町風戸山で起きた山火事では、122ヘクタールの森林が焼き尽くされました(※5)。ボランティアや自治体が森林再生事業を進めた結果、わずか5年で61.35ヘクタールの森林が再生しています。
※5参考:香川県公式ホームページ「主要な山地災害とその復旧 災害復旧記録」
EcoFlow火災支援

EcoFlowは、持続可能な社会作りに関する企業CSR活動「EcoFlow Power For All」の一環として、2025年1月に米西部カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した大規模山火事において、避難者や救助隊を支援させていただきました。パサデナのローズボウルやEaton Fireの避難者向けに、ポータブル電源や必要物資を提供し、重要な電力供給を確保しました。
2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災は、発生から6日が経過した現在も延焼が続いており、市の面積の8%が焼失しています。
避難指示が発令された地域にお住まいの方は、速やかに避難し、安全を最優先に行動してください。一部の避難所はすでに満員となっているため、知人宅への避難も検討しましょう。
また、被災地域にお住まいで支援を必要とされる方は、可能な限りご支援いたしますので、以下の連絡先までお問い合わせください。
皆様のご無事を心よりお祈り申し上げます。どうか安全にお過ごしください。