災害での停電や電気代の高騰などがきっかけとなり、蓄電池が注目を集めています。
蓄電池は鉛バッテリーが主流でしたが、近年はリチウムイオンバッテリーが広く普及し、そのなかでもリン酸鉄リチウムイオンバッテリーは比較的新しい製品に多く利用されています。
この記事では、他のリチウムイオンバッテリーとの違いやメリット・デメリット、おすすめの使い方や製品などを紹介します。
家庭への蓄電池の導入を検討している人は参考にしてください。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとは
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、正極にリン酸鉄リチウムを使用したバッテリーのことです。
リチウムイオンバッテリーは正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行いますが、電極に使用する素材によってそれぞれ特徴が異なるため、種類が分かれます。
ここではリン酸鉄リチウムイオンバッテリーについて、他のリチウムイオンバッテリーとの比較や、メリット・デメリットについて紹介します。
リチウムイオンバッテリーはおもに3種類
リチウムイオンバッテリーは系統が多様に分かれています。
- ニッケル系
- コバルト系
- マンガン系
- チタン酸系
- リチウムポリマー系
- 三元系
- リン酸鉄系
- NCA系
このなかでも使用率の高い代表的な2種類と、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを比較しました。
バッテリーの種類 | リン酸鉄リチウム | 三元系リチウム | NCA系リチウム |
正極材 | ・リン・鉄・リチウム | ・ニッケル・マンガン・コバルト | ・ニッケル・コバルト・アルミニウム |
負極材 | 黒鉛 | 黒鉛 | 黒鉛 |
最低放電温度 | -20℃ | -10℃ | -20℃ |
熱分解の温度 | 700℃ | 200℃ | 200℃ |
サイクル回数(寿命) | 2,000~4,000回 | 約800回 | 500回 |
自己放電 | 1ヶ月で1% | 1ヶ月で5% | 1ヶ月で5% |
重量 | 重い | 軽い | 軽い |
エネルギー密度 | 低い | 高い | 高い |
販売価格 | 高い | 安い | 高い |
主な用途 | ・電動工具・電動自転車・蓄電システム | ・電動自転車・医療機器・自動車産業 | ・医療機器・自動車産業 |
特徴 | 熱暴走が起こりづらく、安全性が高い | コバルト系の安全性を高め、車載向けに改良 | 高エネルギー密度化に優れ、発熱量が少ない |
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの強みである長寿命と安全性は、その特徴を十二分に活かしたポータブル電源などの蓄電システムに採用されることが多い理由となっています。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのメリット
リン酸鉄リチウムバッテリーのメリットについて、もう一歩踏み込んで詳しく紹介します。
安全性の高さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは熱暴走(発火や発熱)を起こしにくいため、安心して使用できます。
正極活物質(ここではリン酸鉄のこと)は高温になると、分子を安定させるために原子の結合を切ろうとして熱分解を起こします。
しかしその温度が700℃と群を抜いて高いため、高温の環境でも安定かつ安全に動作します。
寿命の長さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは寿命が約10~30年と、圧倒的な長寿命を実現します。
蓄電池の寿命を確認する目安に「100%充電されている状態から0%になるまでを1サイクルとし、何サイクル利用できるか」を指す『サイクル回数』があります。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーはサイクル回数が2,000~4,000回とされています。
例えば1日1サイクルで4,000回まで毎日繰り返すと、単純計算で10年以上の長期間に渡り使用できることになります。
三元系やニッケル系など、他の蓄電池と比べると倍以上の違いです。
自己放電率の低さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの1ヶ月の自己放電率(未使用で放置した場合の電気の減る割合)は、わずか1%程度です。
自動車などに搭載されている鉛バッテリーは約20%、リチウムイオンバッテリーは平均約5%です。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの自己放電率は1%とさらに低いため、忙しく残量を確認する必要がなく管理が楽です。
耐久温度範囲の広さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、低温環境においても-20℃までなら使用が可能です。
使用環境の温度幅が広いこともさることながら、-20℃という環境は日本では考えられない温度ではないため、北国などの過酷な寒冷地でも安心して使用できるのは強みでしょう。
原材料価格の安さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーはレアメタルを材料に含まないため、圧倒的に原材料費が安価です。
リン酸鉄リチウムに含まれるリン・鉄・リチウムは共に自然界に広く存在しtています。
現に地殻の約0.1%はリンで構成され、リチウムもこの先200年は生産に耐えうる埋蔵量があるといわれている素材です。
それに比べてコバルトやニッケルは『レアメタル』と呼ばれ手に入りにくく枯渇も危ぶまれている素材のため、現在は原材料の価格が高止まりしています。
リン酸鉄リチウムの価格は4分の1と安価ながら、バッテリーとしては三元系の8割近くを蓄電できるため、コストがかなり抑えられます。
環境への配慮
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは採掘の段階で環境汚染につながるようなコバルト・ニッケルなどを多く使用していないため、環境にも優しい素材です。
レアメタルの採掘には土や水・空気などが汚染され、廃棄する際も注意が必要です。
リチウムもレアメタルのため、まったく汚染がないわけではありませんが、レアメタルの使用が多い他のバッテリーに比べるとリン酸鉄リチウムのリスクは低いといえます。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリット
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーにはデメリットもあります。
ここでは、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリットを紹介します。
エネルギー密度の低さ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度が低いため、採用した製品の体積が大きくなりやすいデメリットがあります。
エネルギー密度とは一定の体積に蓄えられるエネルギーのことで、例えばエネルギーを小さく圧縮できる=エネルギー密度が高い、となります。
サイズが大きくなると、収納時に嵩張ってしまったり重くなったりするため、スペースの確保が必要で、持ち運びには適しません。
しかし肝心の蓄電量を確保できて自己放電も微々たる程度であるため、ポータブル電源としては十分な役目を果たせるでしょう。
製品価格が高い
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは販売価格が他の種類に比べて高めです。
原材料は上述の通り安く抑えられますが、バッテリー化の工程に大きなコストがかかるためです。
他にも、リン酸鉄リチウムの基本特許・製造の過程で行うカーボンコーティング技術の特許に対して発生する特許料が安くないという理由があります。
しかし10年以上の長期に渡って活躍が期待できるため、予備電源として一家に一台あると思うと大きな安心が得られます。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーとソーラーパネル
充電方法としてはソーラー発電システム、走行充電器、外部充電器の3つがありますが、どこからも電源が引けない災害時やキャンプ時などはソーラーパネルが活躍します。
ここではリン酸鉄リチウムイオンバッテリーとソーラーパネルを併せて使用するメリットや注意点について紹介します。
→ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせる理由とは?具体的なメリットと製品の選び方
ソーラーパネルと蓄電池は注目を集めている
災害などの停電で電源がない場合でも充電に困る心配がないソーラーパネルと蓄電池は、防災意識の高まっているこの時代の強い味方です。
また、電気代がどんどんと高くなる昨今、買電のコストを削減でき、電力需給対策における節電要請などにも安心して対応できます。
実際注目を集めている住宅用太陽光発電は、国に蓄電池補助金の申請ができるというメリットもありますが、この先も確約があるわけではなく、補助金が出ても初期費用が高額です。
そのため、最近はリーズナブルに揃えられるポータブル電源とソーラーパネルのセット製品を検討・導入している家庭も多く見られます。
ポータブル電源は蓄電池補助金の対象ではありませんが、自治体によっては対応している場合もあるため、購入前の問い合わせをおすすめします。
デルタシリーズは過充電の問題がない
EcoFlowのデルタシリーズは、電圧や電流・温度を監視し管理・制御する『バッテリーマネージメントシステム(BMS)』を搭載しているため、過充電・過放電の心配がありません。
過充電とは容量が100%を超えても充電しようとすることで、許容量を上回ると電池内の状態が不安定になり寿命を早めてしまい、最悪の場合、発火や破裂の危険性があります。
デルタシリーズは何年間もの連続使用に耐えるバッテリー性能を維持するため、BMSが電圧・電流・温度を監視・管理しています。
ソーラーパネルとポータブル電源は相性がある
電気がない場合でも充電が可能になるソーラーパネルは、他社のバッテリーと互換性がない場合があります。
そのため、今ポータブル電源を持っている場合は、互換性があるソーラーパネルを探す必要があります。
EcoFlowのソーラーパネルは他社製品とも互換性があります。
そして、これからポータブル電源の購入を検討している人は、ソーラーパネルとセットで購入すると使用に間違いがなく安心であるうえ、割引などお得に購入できるケースがあります。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの相場は1kWhあたり13~20万円と決して安くはないため、相性のよい組み合わせをセット割で選ぶのは賢い選択でしょう。
EcoFlow×リン酸鉄リチウムイオンバッテリー
EcoFlowのリン酸鉄リチウムイオンバッテリー採用のポータブル電源と、セットで快適に使用できるソーラーパネルを紹介します。
EcoFlow DELTAシリーズ
EcoFlowのデルタシリーズはBMS(バッテリーマネジメントシステム)を搭載した大容量・高出力のポータブル電源です。
アダプターのないケーブルで高効率で充電するため従来10時間以上かかっていたものが1時間程度で80%の充電が可能です。
また、定格出力を超える電化製品もX-Boost機能がある製品では高出力電化製品の『電圧を下げる』ことで作動が可能です。
DELTAシリーズ | DELTA 2 | DELTA 2 Max | DELTA Pro |
容量 | 1024Wh | 2,048 Wh | 3,600Wh |
サイズ | 40.0×21.1×28.1cm | 49.7×24.2×30.5 cm | 63.5×28.5×41.6 cm |
重量 | 約12kg | 約23kg | 約45㎏ |
寿命(80%+) | 3000回以上 | 3000回以上 | 3500回以上 |
AC充電 | 最大1,200W | 最大1,500 W | 最大1,500W |
出力ポート数 | 15ポート | 15ポート | 15ポート |
定格出力 | 1500W | 2,000W | 3,000W |
X-Boost™ | 1,900W | 2,400W | 3,750W |
特にDELTA Proは最大2台のエクストラバッテリーの接続で最大容量を10,800Whに増やすことが可能で、停電時における約6日分に相当する必要電力を確保できます。
→最強ポータブル電源の5つの条件!「DELTA Pro」が最強な理由
充電・放電・保管の動作温度範囲の広いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが、災害後の過酷な環境下でも問題なく作動することで、EcoFlowの目指す、いわゆる『停電のない世界』を実現します。
ソーラーパネルとのセット購入では、どこでもパネルを広げさえすればエネルギーを生み出せる蓄電システムが手に入ります。
EcoFlow RIVERシリーズ
業界トップクラスの急速充電を備えながら、重いイメージのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーにおいて高い携帯性を叶えたEcoFlow RIVERシリーズは、はじめてのポータブル電源としておすすめです。
RIVERシリーズ | RIVER 2 | RIVER 2 Pro | RIVER 2 Max |
容量 | 256Wh | 768Wh | 512Wh |
サイズ | 24.5×21.5×14.5cm | 26.9×25.9×22.6cm | 26.9×25.9×19.6cm |
重量 | 約3.5kg | 約7.8kg | 約6.1kg |
寿命(80%+) | 3,000回以上 | 3,000回以上 | 3,000回以上 |
AC充電 | 100-120V 50Hz/60Hz,最大8A | 100-120V 50Hz/60Hz,最大10A | 100-120V 50Hz/60Hz,最大10A |
出力ポート数 | 11ポート | 10ポート | 11ポート |
定格出力 | 300W | 800W | 500W |
X-Boost™ | 450W | 1000W | 750W |
軽量でコンパクトですが、出力ポート数の多さと寿命の長さ、X-Boost機能などその優秀さはDELTAシリーズにも引けをとりません。
ソーラーパネルとの使用は相性抜群で、災害時の備えとして用意した蓄電システムが、キャンプや車中泊などアウトドアで活用しやすいという点は、付加価値といえるでしょう。
→小型ポータブル電源の魅力や使い方は?おすすめの商品も紹介します!
EcoFlowソーラーパネルシリーズ
EcoFlowソーラーパネルシリーズは他社との互換性が高いため、今お持ちの他社のポータブル電源と併用しての利用も安心です。
丈夫で防水機能つきの優れた耐久性、コンパクトに折りたためて移動も楽とくれば、どのような状況でも天候さえよければ電力確保が可能になります。
ソーラーパネルシリーズ | 400Wソーラーパネル | 220W両面受光型ソーラーパネル | 160Wソーラーパネル | 110Wソーラーパネル |
サイズ | 236.5×105.8×2.5cm | 82×183.5×2.5cm | 68×157×2.4cm | 114.7×55.6×2cm |
重量 | 約16.0kg | 約9.5kg | 約7.0kg | 約5.65kg |
効率 | 22.60% | 22〜23% | 21%~22% | 23% |
1枚使用時のDELTA 2充電時間 | 3~6 時間 | 6~12 時間 | 8~16 時間 | 12~24 時間 |
※充電時間は天候によります。
※出力コネクタ仕様はMC4です。
EcoFlowのソーラーチャージャーは、変動する天候の最適動作点に追従しながら動作し出力を最大化するMPPT制御方式を採用しているため、本格的なソーラー発電が可能です。
400Wソーラーパネルは1枚でも十分な出力が可能ですが、3枚を直列接続することで最大1,200Wもの発電が可能。
220W両面受光型ソーラーパネルは表面の太陽光だけでなく、裏面からもあらゆる照り返しを受光するため、最大25%の出力増加が見込めます。
価格はリーズナブルですが大口注文・おまとめ購入での割引サービスを利用して、電源だけでなく安心の『発電』も確保しましょう。
まとめ
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのメリットやデメリット、仕組みや活用方法を紹介しました。
『電力』に縛られずに過ごす安心な生活のために『蓄電』があり、その選択肢の一つとして、安全性に特化したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの採用があります。
EcoFlowポータブル電源は、定格出力を超える使用が可能なX-Boostテクノロジーや高速充電を実現する特許技術のX-Stream、拡張性のあるバッテリー設計などの特徴のほか、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのラインナップも充実しています。
EcoFlowソーラーパネルは太陽光発電の変換効率が高い単結晶シリコンセルを搭載し、EcoFlowのポータブル電源を高効率で充電しながら、同時にさまざまな電気機器の使用が可能、そのうえ持ち運びが簡単で収納時も嵩張りません。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを検討の際はソーラーパネルも併せてEcoFlow製品をぜひご参考ください。
災害時やアウトドアでの蓄電や発電は、EcoFlowのポータブル電源が安定の大容量で支えます。